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税理士後に実務経験が2年も必要?税理士登録の流れ

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努力が実り、税理士試験に合格、いよいよ税理士に…。
といいたいところですが、税理士試験の合格だけでは、正式には「税理士となる資格」を有する者「税理士」と名乗ることはできません。

税理士として活躍するには、合格後、日本税理士会連合会が管理する税理士名簿に登録されなければなりません。

今回は、この税理士登録に関する内容についてみていきましょう。

■税理士になるための必要な手順

(1)税理士登録に必要な実務経験について(実務の要件)

税理士登録を行うには、試験の合格だけでなく、実務経験の要件があります。

国税庁が公開する「税理士の登録」に関する資料では、「税理士となる資格」を有する者のうち、実際に税理士として登録されるには、弁護士や公認会計士の有資格者以外は「会計に関する事務(貸借対照表や損益計算書を設けて経理する事務)などに従事した期間が通算して2年以上あることを要件としています。

https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/toroku/touroku.htm

すなわち、税務や会計に関する実務に携わる期間が2年以上なければ、せっかく試験に合格しても税理士として活躍することはできません。

(2)税理士登録に必要な期間は?

ただし、ここでいう2年は通算期間であるため、同一の事務所である必要はなく、また、試験合格後である必要もありません。

そのため、試験勉強と並行して実務を行っていれば、合格と同時に登録することも可能です。

また、「実務」は、税理士事務所等での勤務実態でなければいけないわけではなく、企業の経理部署などの経歴でも実務経験として認められます。

ただし、要件にある「貸借対照表や損益計算書を設けて経理する事務」とは、一般的に企業の決算業務に関わる仕事をしていたこととされています。

そのため、経理部署にいた経歴があっても、単に入力業務の一部を担当していたりや、財務部門にいたりなど、会計業務とは違った業務を行っていた場合には、実務経験とみなされない場合もあります。

そのため、企業内でのポジションで登録要件を満たす業務ができないようであれば、仕事自体を見直す必要があるかもしれません。

(3)税理士登録に必要な書類

次に税理士登録に必要な書類を見ていきましょう。

登録には下記の書類が必要となります。

  • 登録申請書
  • 履歴書
  • 戸籍抄本
  • 住民票
  • 税理士となる資格を有する書面(税理士試験合格証書など)
  • 直近2年分の確定申告書のコピー
  • 在職証明書又は職歴証明書
  • 源泉徴収票又は確定申告書
  • 身分証明書
  • 日税連会長あて誓約書
  • 事務所設置に関する書類(事務所設置同意書)
  • 事務所に関する念書
  • 事務所予定地の略図
  • 登録免許税領収済通知書(納付書)
  • 登録手数料(5万円)
  • その他(写真や返信用のはがきなど)

ここで、いくつか重要な書類を見ていきましょう。

①在職証明書・源泉徴収票
実務経験2年間を証明するためは、経歴とする会計事務所や会社の源泉徴収票が必要となります。また、この証明を行う者から在職証明書にサインをもらわなければなりません。すでに退職してしまった職歴を実務経験とする場合には、こうした証明作業を行ってもらうよう、かつての職場に依頼する必要があります。そのため、退職時から友好な関係を継続していることも重要なポイントです。

②身分証明書
法令上の権利行為に制限がある者でないことを証明するための書類です。

身分証明書は、「破産宣告の通知を受けていないこと」「成年後見の登記の通知を受けていないこと」「禁治産者等に該当しないこと」を証明する書類であり、本籍地の市区町村の戸籍課などで取得できます。

これらの登記がある者は、職務を全うできないものとされることから、税理士登録の際の欠格事由となります。

③事務所設置に関する書類
税理士登録を行うには、事務所を設置することが義務付けられています。ここでいう事務所とは、自宅等と分離されていなければいけないわけではなく、あくまで事務作業を行うスペースが設けられているか否かという点が問題となります。

事務所が実際に設けられているかどうかは、支部の面談の際に訪問により確認されるため、虚偽の記載はできません。

特に注意が必要なことは、税理士事務所の所在地は日本税理士会連合会が保有する税理士名簿に記載されるため、公開情報なってしまいます。

住居契約の物件などでは、こうした事業所の登録を禁止しているものも多く、賃貸人に許可を得ず、登録してしまった場合にはトラブルになることも考えられます。そのため、事前に管理会社などに確認し、許可を得ておく必要があります。

なお、こうしたトラブルが起きた際に自身で責任を持って解決するための念書の提出も必要です。

書類のひな形は日本税理士会連合会のサイト内にフォーマットがあるため、これをダウンロードして記載します。

https://www.nichizeiren.or.jp/prospects/entry/doc/

■登録時研修について

(1)登録時研修とは

税理士登録が終了した後には、各税理士会が主催する「登録時研修」を受講しなければなりません。

登録時研修とは、税理士に登録をして1年以内の税理士を対象とした研修であり、計20時間前後の研修で、数日間に渡り開催されます。研修内容は、税法等の業務知識だけに留まらず、税理士法や憲法など法律、税理士の倫理規定などが取り上げられ、実務家だけでなく専門知識を有する大学教授等も登壇します。

(2)登録時研修以外の研修

この登録時研修以外にも、税理士は年間36時間の研修受講が義務規定とされています。こうした研修を受講し、常に知識のブラッシュアップを図ることが登録後も求められるのです。

■税理士登録をすることのメリット・デメリット?

(1)税理士登録のメリットは?

最後に、税理士登録におけるメリットやデメリットを見ていきましょう。

当然のことながら、税理士登録を行わなければ独立開業は行えません。また、税理士法人等の勤務税理士として活躍する場合であっても肩書に「税理士」と名乗れるのは、税理士登録を行っている者のみです。そのため、税理士としての地位を持ち責任のある環境で働く場合には、登録は必須であるといえるでしょう。

これに対し、一般企業の経理職などを行う際には必ずしも直接的なメリットがあるわけではありません。しかし、企業内で資格を持った税理士が職務に当たっていることは、企業のブランディングとしても意義がある場合も多く、資格手当など直接的な収入に結びつく可能性もあります。

国家資格である税理士を名乗ることは、責任ある立場として活躍していることを現しているため、資格取得後、会社から税理士登録を進められた場合には、簡単に応じることなく、その点も考慮し、交渉を行うことも重要です。

(2)税理士登録のデメリットは?

次にデメリットですが、最も考慮すべきポイントは金銭的負担です。

税理士登録を行う際には、下記の登録費用が掛かります。

  • 登録免許税 60,000円(登録免許税法の規定による税金。品川税務署宛に納付)
  • 日本税理士会連合会に対する登録手数料 50,000円
  • 所属税理士会の入会金、年会費、その他の費用
    ※単位会ごとに料金は異なります。一例として、東京税理士会のこれらの費用を上げると
    入会金40,000円、年会費81,000円、会館建設負担金20,000円
    https://www.tokyozeirishikai.or.jp/tax_accuntant/certify/regist/moveto/
  • 所属支部の年会費 所属支部により異なる(概ね50,000円程度)

以上をまとめますと、初年度で概ね30万円程度、次年度以降の年会費で12~3万円程度の費用がかかります。

そのため、これらの費用負担をしても資格を保持する必要があるのかは一つのポイントになります。

ただし、年会費などは、登録後に税理士会や自治体、青色申告会等が主催する各種相談会や税務署の記帳指導などに応募すれば、それに見合うだけの収入を得ることも可能であり、会社員でも有給休暇などでやりくりできれば参加することが可能です。

また、国家資格は社会的地位を保証する役割もあるため、住宅ローンや不動産の賃貸などの審査時に有利に働くケースも多いです。

こうしたメリット、デメリットを考慮し、登録の有無を検討してみましょう。

なお、前述のとおり、いくら試験に合格していても、税理士登録がない者が「税理士」と名乗ることは税理士法に反する犯罪行為です。バレないだろうという軽はずみな思惑から出た嘘が新聞沙汰にもなったケースが何件もありますので、必要性を自身でよく検討して行動することが大切です。

■まとめ

最後に、現役税理士が税理士登録を行った後、どう思ったかという点についてですが、多くの税理士が「人生のステージが変わった」といったような感想を持っているようです。

これは、職探しにおける年収や待遇の条件が資格の有無で変わるだけでなく、資格を通して経験できる出会いやコミュニティなど、会社員や会計事務所職員では経験できない経験があることが多いためです。

また、副業が可能な会社であれば、会社員としての生活の安定を図りながら、別の収入を得ることも可能であり、会社員の段階から少しずつクライアントを増やすことも可能です。現状が厳しいものであれば、すぐに独立開業を行うことも可能です。

多様性のある社会において、特定の会社からの収入だけでは不安定な時代となりつつあるなかで、税理士資格は自由なライフスタイルを得ることができる可能性を大きく秘めたツールなのです。

執筆者プロフィール

小島 孝子(こじま たかこ)
税理士

神奈川県出身。税理士。
早稲田大学在学中から地元会計事務所に勤務。その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。幅広い実務経験と、講師経験から実務家向けセミナー講師多数担当。「実務」と「教えるプロ」の両面に基づいたわかりやすい解説に定評がある。実務においては、街歩き、旅行好きの趣味を生かし、日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、『旅する税理士』。

著書

3年後に必ず差が出る20代から知っておきたい経理の教科書(翔泳社)2014年
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簿記試験合格者のためのはじめての経理実務(税務経理協会)2016年
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