税理士補助という仕事に興味を持っている方は、どのようなスキルや資格が必要なのか気になっているのではないでしょうか。税理士事務所で働きながら専門知識を身につけ、将来的には税理士を目指すという道もあれば、税理士補助としてのキャリアを極めていく選択肢もあります。この記事では、税理士補助として働くために必要な資格やスキル、そしてキャリアパスについて詳しく解説していきます。
税理士補助に必要なスキル・資格とは?キャリアパスも解説
2025年12月19日 ジャスネットキャリア編集部
目次
■税理士補助の基本知識
(1)税理士補助の基本的な業務内容
税理士補助は、 税理士事務所において税理士をサポートする重要な役割を担っています 。日々の業務では、クライアント企業から預かった領収書や請求書などの書類を整理し、会計ソフトへのデータ入力作業を行います。この入力作業は単純に見えるかもしれませんが、正確性が求められる非常に重要な仕事です。
また、月次決算や年次決算に向けた資料作成も税理士補助の大切な仕事のひとつです。試算表を作成したり、決算書の下書きを準備したりすることで、税理士がスムーズに業務を進められるよう支援します。さらに、確定申告の時期には申告書の作成補助として、必要な数値の集計や書類の準備を担当することもあります。
クライアントとのやり取りも税理士補助の業務に含まれます。必要書類の依頼や簡単な質問への対応、訪問時のスケジュール調整など、事務所とクライアントをつなぐ橋渡し役として活躍します。事務所によっては、給与計算や年末調整といった労務関連の業務に携わることもあり、幅広い知識とスキルが求められる職種といえるでしょう。
【参考記事】
税理士補助とは?仕事内容・年収・キャリアパスまで徹底解説【未経験OK】
https://career.jusnet.co.jp/tax/tax_02_03.php
税理士補助は年収が低い?高収入を得るための方法を徹底解説
https://career.jusnet.co.jp/tax/tax_05_13.php
(2)税理士との役割の違い
税理士補助と税理士の最も大きな違いは、独占業務を行えるかどうかという点にあります。 税理士法により、税務代理や税務書類の作成、税務相談といった業務は税理士資格を持つ者だけが行える独占業務とされています。つまり、どれだけ経験豊富な税理士補助であっても、これらの業務を単独で行うことはできません。
税理士補助は、税理士の指示のもとで補助的な業務を担当します。たとえば申告書の作成では、税理士補助が数値の集計や下書きを行い、最終的な内容の確認と署名は税理士が行うという流れになります。また、クライアントからの税務相談に対しても、税理士補助は直接的な回答を避け、税理士に取り次ぐ必要があります。
ただし、この役割分担は決して税理士補助の価値を低くするものではありません。税理士が専門的な判断や相談業務に集中できるのは、税理士補助が日常的な業務を正確にこなしているからこそです。税理士事務所の運営において、両者は車の両輪のような存在といえるでしょう。
■税理士補助に役立つ資格
①税理士の科目合格
税理士試験は科目合格制を採用しており、一度に全科目合格する必要はありません。 簿記論や財務諸表論といった会計科目、あるいは所得税法や法人税法などの税法科目のいずれかに合格していることは、税理士補助として働く上で大きな強みになります。
科目合格者は税務や会計の専門知識を体系的に学んでいる証明となり、採用時に高く評価されます。特に簿記論と財務諸表論の両方に合格していると、会計の基礎がしっかり身についていると判断され、即戦力として期待されることが多いでしょう。また、税法科目の合格は税務の実務知識を持つことの証となり、より専門的な業務を任されるチャンスが広がります。
②日商簿記
日商簿記検定は、税理士補助として働く際に最も基本となる資格です。 最低でも2級、できれば1級まで取得しておくと業務をスムーズに進められます。 簿記2級では商業簿記と工業簿記の両方を学び、企業の経理実務に必要な知識を幅広く習得できます。
簿記の知識があることで、クライアントから預かった書類を見たときに、どの勘定科目で処理すべきか判断できるようになります。また、試算表や決算書を作成する際にも、数字の意味を理解しながら作業を進められるため、ミスを防ぎやすくなります。簿記1級まで取得していれば、より複雑な会計処理にも対応でき、税理士補助としての業務の幅が大きく広がるでしょう。
簿記の資格は比較的短期間で取得可能であり、未経験から税理士補助を目指す方にとっては、まず最初に挑戦すべき資格といえます。実際、多くの税理士事務所では求人応募の条件として簿記2級以上を設定しています。
③FP(ファイナンシャルプランナー)
ファイナンシャルプランナー資格は、税務だけでなく社会保険や相続、不動産など幅広い知識を証明できる資格です。税理士補助として働く場合、直接的には必須ではありませんが、持っていると業務の幅が広がります。
個人のクライアントを多く抱える事務所では、相続税の相談や資産運用のアドバイスを求められることがあります。そのような場面で、FPの知識があることで税理士をより効果的にサポートできます。また、法人のクライアントに対しても、経営者の個人資産や事業承継の相談に関わる際にFPの知識が役立つことがあります。
FP2級以上を取得していれば、顧客対応の場面で専門知識を活かした的確なサポートができるようになり、事務所内での評価も高まるでしょう。
■税理士補助に求められる知識
①税務の知識
税理士補助として働く以上、税務の知識は必要不可欠です。 所得税や法人税、消費税といった主要な税目について、基本的な仕組みを理解していることが求められます。 とはいえ、最初からすべてを完璧に知っている必要はありません。実務を通じて少しずつ知識を深めていくことができます。
申告書の作成補助を行う際には、どのような計算が必要で、どんな資料を準備すべきか理解していることが大切です。また、税制は毎年改正されるため、常に最新の情報をキャッチアップする姿勢も重要になります。事務所内の勉強会や外部のセミナーに参加するなどして、継続的に税務知識を更新していく努力が求められるでしょう。
実務では、法人税の別表作成や消費税の区分集計など、専門的な知識が必要な場面に直面します。そうした場面で自分なりに調べ、理解しようとする姿勢があれば、着実に専門性を高めていくことができます。
②会計の知識
会計の知識は税理士補助の業務の根幹をなすものです。 企業の取引を正しく記帳し、正確な財務諸表を作成するためには、会計原則や会計基準についての理解が欠かせません。 簿記の資格取得を通じて得た知識を、実際の取引に当てはめて考える力が求められます。
決算業務では、在庫の評価方法や減価償却の計算、引当金の計上など、さまざまな会計処理を行います。それぞれの処理にはルールがあり、そのルールを正しく適用できることが重要です。また、会計ソフトを使いこなすためにも、仕訳の基本的な考え方を理解していることが前提となります。
最近では国際会計基準の影響もあり、会計処理の方法も変化しています。実務に携わりながら、常に新しい会計の動きにアンテナを張っておくことで、より高度な業務にも対応できるようになるでしょう。
③経営の知識
税理士補助の仕事は、単に数字を扱うだけではありません。クライアント企業の経営状況を理解し、経営者の視点で物事を考えられる力も大切です。財務諸表を見たときに、その会社がどのような状況にあるのか、どこに課題があるのかを読み取れるようになると、より質の高いサポートができます。
経営の知識があることで、税理士が行う経営相談の場面でも適切な補助ができます。たとえば、資金繰りの相談を受けた際に、キャッシュフロー計算書を作成したり、資金繰り表を整理したりする作業を任されることもあります。そうした場面で、経営の基本的な考え方を理解していれば、税理士の意図を汲み取りながらスムーズに業務を進められます。
■税理士補助に必要なスキル
①正確性
税理士補助の仕事において、正確性は何よりも重要なスキルです。わずかな入力ミスが決算書の数字に影響し、ひいては税額の計算にも関わってきます。クライアントの信頼を損なわないためにも、常に細心の注意を払って業務に取り組む姿勢が求められます。
正確な仕事をするためには、ダブルチェックの習慣をつけることが大切です。入力した数字を再度確認したり、計算結果を別の方法で検算したりすることで、ミスを未然に防ぐことができます。また、自分の作業に対して責任感を持ち、「これで大丈夫だろう」という曖昧な判断を避ける慎重さも必要です。
②コミュニケーション能力
税理士補助は事務所内での調整役としても活躍します。税理士や他のスタッフと円滑に情報共有をしたり、クライアントから必要な書類を気持ちよく提出してもらったりするには、良好なコミュニケーションが欠かせません。
特にクライアント対応では、専門用語をわかりやすく説明する力が求められます。経営者の中には会計や税務の知識があまりない方もいらっしゃいますので、相手の理解度に合わせた説明ができることが大切です。また、聞き上手であることも重要で、クライアントの悩みや要望を正確に把握し、税理士に適切に伝える役割を果たします。
③パソコンスキル
現代の税理士補助にとって、パソコンスキルは必須です。会計ソフトの操作はもちろんのこと、Excelでのデータ加工やWordでの文書作成など、日常的にさまざまなソフトウェアを使いこなす必要があります。
会計ソフトは事務所によって使用するものが異なりますが、基本的な操作方法は共通している部分も多いため、パソコンの基礎スキルがあれば新しいソフトにも比較的早く慣れることができます。また、ExcelのVLOOKUP関数やピボットテーブルなどを使いこなせると、大量のデータを効率的に処理できるようになり、業務のスピードアップにつながります。
最近では電子申告が主流となっているため、e-Taxのシステム操作も求められます。さらに、クラウド会計ソフトの普及により、インターネット上でのデータ共有やリモートワークに対応できるITスキルの重要性も高まっています。
④継続した学習意欲
税務や会計の世界は常に変化しています。税制改正や会計基準の変更に対応していくためには、継続的に学び続ける姿勢が不可欠です。税理士補助として成長していくためには、自ら進んで新しい知識を吸収しようとする学習意欲が求められます。
税理士試験の勉強を続けている方はもちろんですが、試験勉強をしていない場合でも、実務に関連する書籍を読んだり、セミナーに参加したりすることで専門性を高めることができます。また、日々の業務の中でわからないことに出会ったときに、それを調べて理解しようとする探究心も大切です。
学習意欲が高い人は、事務所内でも評価され、より責任のある仕事を任されるようになります。 キャリアアップを目指す上でも、学び続ける姿勢は欠かせない要素といえるでしょう。
■税理士補助としてのキャリアパス
(1)税理士補助からのステップアップ
税理士補助としてのキャリアには、いくつかの選択肢があります。まず、税理士資格の取得を目指すという王道のルートがあります。働きながら税理士試験の勉強を続け、科目合格を重ねていくことで、最終的には税理士として独立開業したり、事務所のパートナーになったりする道が開けます。
税理士資格を目指さない場合でも、ベテランの税理士補助として専門性を極めていくキャリアもあります。経験を積むことで、複雑な案件を任されるようになったり、若手スタッフの教育係として活躍したりする役割が与えられます。給与面でも、経験と能力に応じて昇給していく事務所が多く、長く働き続けることで安定したキャリアを築くことができます。
また、税理士事務所での経験を活かして、企業の経理部門や財務部門に転職するという選択肢もあります。税理士事務所で培った税務知識や決算業務のスキルは、企業の経理実務でも高く評価されます。特に上場企業や大手企業の経理部門では、税務の専門知識を持つ人材が求められており、キャリアの幅を広げることができます。
(2)税理士資格取得後のキャリア
税理士資格を取得した後は、さらに多様なキャリアの道が広がります。既に勤務している事務所で税理士として働き続けるのもひとつの選択肢です。実務経験が豊富な事務所であれば、税理士としてより高度な業務に携わりながら、事務所の経営にも関わっていくことができます。
独立開業を目指す方も多くいます。自分の事務所を持つことで、クライアントとの関係を自ら築き、自分の理想とする税理士像を実現できます。ただし、開業には営業力や経営力も必要となるため、勤務税理士として十分な経験を積んでから独立するケースが一般的です。
近年では、税理士資格を活かして一般企業の税務担当者として働く方も増えています。企業内税理士として、自社の税務申告や税務戦略の立案に携わる仕事です。また、コンサルティング会社に所属して、M&Aや事業再生などの専門的なアドバイザリー業務に従事するという道もあります。税理士資格は、幅広いフィールドで活躍できる可能性を与えてくれる資格といえるでしょう。
■税理士補助に関するよくある疑問
(1)税理士補助と経理の違いは?
税理士補助と経理は、どちらも会計や税務に関わる仕事ですが、働く場所と役割が異なります。経理は企業内で自社の会計処理を担当する職種です。日々の取引を記帳し、月次決算や年次決算を行い、自社の財務状況を把握する役割を果たします。
一方、税理士補助は税理士事務所で複数のクライアント企業の会計や税務をサポートします。さまざまな業種の企業と関わることができるため、幅広い経験を積めるのが特徴です。また、税務申告に直接関わることができるため、税務の専門知識を深めやすい環境にあります。
どちらの仕事が向いているかは、その人の志向によります。 特定の企業に腰を据えて働きたい、社内の業務フローを改善していきたいという方は経理が向いているでしょう。一方、多様な企業と関わりたい、税理士を目指したいという方には税理士補助が適しています。
(2)税理士試験に合格する勉強法は?
税理士試験は難関資格として知られており、働きながら合格を目指すには効率的な勉強法が必要です。まず重要なのは、学習計画をしっかり立てることです。試験は毎年8月に実施されるため、そこから逆算して学習スケジュールを組み立てます。
多くの合格者は、資格学校や通信講座を利用しています。独学で合格することも不可能ではありませんが、体系的なカリキュラムと質の高い教材を提供してくれる学校を利用することで、効率的に学習を進められます。特に働きながら勉強する場合は、限られた時間を有効活用するためにも、プロの指導を受けることをおすすめします。
日々の学習時間の確保も重要です。仕事が終わった後の2時間から3時間、休日には5時間から6時間程度を勉強に充てるのが一般的です。継続することが何より大切なので、無理のない範囲で毎日コツコツと積み重ねていく姿勢が求められます。職場の理解を得て、試験前には休暇を取得できる環境を整えることも成功のポイントです。
(3)未経験でも税理士補助になれる?
結論から言えば、未経験でも税理士補助になることは可能です。多くの税理士事務所では、意欲的な人材であれば未経験者でも採用しています。ただし、 未経験で応募する場合は、簿記2級以上の資格を持っていることが求められるケースが多いでしょう。
未経験から税理士補助になるためには、まず簿記の勉強から始めることをおすすめします。簿記2級を取得した上で、税理士試験の勉強を始めていることをアピールできれば、採用の可能性は高まります。また、パソコンスキルも重要ですので、ExcelやWordの基本操作ができることを証明できるとよいでしょう。
入所後は、先輩スタッフの指導を受けながら実務を学んでいきます。最初は簡単な入力作業から始まり、徐々に難しい業務を任されるようになります。わからないことは素直に質問し、積極的に学ぶ姿勢を持つことが成長のカギです。未経験からのスタートでも、数年の実務経験を積めば、十分に戦力として活躍できるようになります。
■まとめ
税理士補助は、税務と会計の専門知識を活かして働ける魅力的な職業です。必要な資格としては、簿記2級以上が基本となり、税理士試験の科目合格があればさらに有利になります。MOSやFPといった資格も、業務の幅を広げる上で役立つでしょう。
求められる知識としては、税務、会計、経営の3つの分野について理解を深めることが大切です。また、正確性やコミュニケーション能力、パソコンスキル、そして継続した学習意欲といったスキルも欠かせません。これらのスキルは実務を通じて磨いていくことができますので、未経験からでも十分にチャレンジできる職種といえます。
税理士補助という仕事は、専門性の高いスキルを身につけながら、多様な企業と関わることができる魅力的な職業です。この記事で紹介した資格やスキルを参考に、ぜひ税理士補助としてのキャリアをスタートさせてみてはいかがでしょうか。
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