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税理士の科目合格とは?期限や企業の評価、求人への応募条件まで徹底解説

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2025年5月27日 ジャスネットキャリア編集部

税理士の科目合格とは、税理士試験の科目にひとつでも合格した状態のことです。税理士試験は科目合格制を採用しているため、複数年にわたってひとつずつ受験をすることができます。

合格すべき5科目のうち、ひとつでも合格していると転職の際に有利になることも。この記事では税理士の科目合格の仕組みや、どういった市場で転職が有利になるか、またその求人例についても紹介します。

目次

■税理士試験と科目合格制度の基礎知識

(1)税理士試験の全体像

税理士試験では、簿記論などの必須科目を含む、全11科目のうち5科目に合格することで税理士資格を得ることができます。すべての科目を一度に合格する必要はなく、複数年にわたって少しずつ合格していくことが可能です。

分類 必須/選択 試験科目
会計学 必須 簿記論
財務諸表論
税法 いずれか1科目選択必須 所得税法
法人税法
選択 相続税法
消費税法または酒税法
国税徴収法
住民税または事業税
固定資産税

必ず受けなければならないのが「簿記論」「財務諸表論」の2科目で、選択必須科目である「法人税法」「所得税法」のいずれか1科目も外せません。

そして、そのほか「相続税法」「消費税法」「酒税法」「国税徴収法」「住民税法」「事業税法」「固定資産税法」のうちから残りの1~2科目を選ぶ仕組みになっています。

(2)科目合格制度とは?

「科目合格制度」とは、一科目ずつ受験できる制度です。一度合格した科目はその後も有効とされ、たとえば今年1科目、来年2科目…というように、働きながら段階的に合格を積み上げていくことが可能です。

この柔軟な制度設計のおかげで、社会人や主婦、子育て中の方など、さまざまなライフスタイルに合わせた学習が可能となっています。

■税理士の科目合格に関する「期限」はあるのか?

(1)実際の有効期限:一度合格すれば一生有効?

結論から言うと、税理士試験の科目合格には有効期限はありません。つまり、一度合格した科目は一生有効で、途中で失効することはありません。

これは大きなメリットであり、長期的に学習・受験計画を立てるうえで非常に有利です。ただし、長期間受験から離れていると、実務や制度の変化に追いつけなくなるリスクもあるため、継続的な学習は必要です。

(2)転職市場で有利な年齢と経験年数のバランス

転職市場では、「年齢」と「合格科目数」「実務経験」のバランスが重視されます。

  • 20代後半〜30代前半で2〜3科目合格
  • 実務経験3年以上(会計事務所・経理・税務など)

この条件を満たすと、多くの企業が「即戦力」として評価します。年齢が上がるほど、単なる科目合格だけでは評価されにくくなるため、早期の経験積みと転職活動がカギとなります。

■税理士の科目合格をすると一般企業での評価は上がる?

税理士の「科目合格」は、単なる通過点ではなく、転職市場において非常に強力なアピール材料になります。特に、税務や会計、経理などの専門職種を求める企業では、税理士試験の一部科目合格者=ポテンシャルの高い即戦力として評価されることが多いです。
以下では、企業が科目合格を評価する理由について3つのポイントにまとめました。

(1)高度な専門知識の証明になる

税理士試験の必須科目である「簿記論」は会計の基本であり、「財務諸表論」は決算書を作成する上では欠かすことのできない知識です。また「法人税法」「所得税法」「消費税法」なども、企業が日常的に対応している税務業務に直結しています。

特に「法人税法」や「消費税法」に合格していると、税務申告・税効果会計・税務調査対応の知識があると見なされ、経理部門での評価は高くなる傾向があります。

(2)自律的に学習できる姿勢を評価

税理士試験は合格率が極めて低く、長期的な学習を必要とするため、「一部でも科目に合格している」時点で「長期間コツコツと学習を継続できる力」の証拠となります。これは業務における計画力・継続力といった、社会人としての基礎能力の高さを間接的に示すものでもあります。

(3)成長ポテンシャルが企業の「中長期的投資価値」となる

企業側にとって、税理士科目合格者は「今後の成長が期待できる人材」として映ります。特に人材育成に積極的な企業では、将来の中核人材候補として見てもらえる可能性が高まります。

税理士法人や会計事務所にとっては、将来的に税理士登録を見越した採用を行っており、長く働いてくれる可能性が高い人材として歓迎されます。

■税理士の科目合格者におすすめの職場・求人

それでは、税理士試験の科目合格者を歓迎している職場や求人にはどういったところがあるでしょうか。

(1)税理士法人・会計事務所

税理士法人や中小規模の会計事務所では、科目合格者を積極的に採用しているケースが多く、働きながら残りの科目を取得するサポート体制も充実しています。

特に「簿記論」「財務諸表論」の必須科目2科目合格者は税理士法人・会計事務所でも即戦力として歓迎されます。また、税務申告に対応できる「法人税法」や「所得税法」「相続税法」「消費税法」なども評価されるでしょう。

(2)上場企業の経理部門

上場企業では、税務申告や連結決算など高度な会計スキルが求められるため、税理士試験の合格者や科目合格者が高く評価されます。税理士法人・会計事務所と同様、「簿記論」「財務諸表論」の合格者が歓迎されるほか、税務部門の担当においては「法人税法」合格者も活躍できるでしょう。

(3)外資系企業やM&A関連企業

国際会計基準(IFRS)や移転価格税制など、高度な税務・会計知識を求められる分野では、科目合格者のような専門知識を持つ人材が重宝されます。英語力と組み合わせれば、キャリアの幅が一気に広がります。

(4)スタートアップやベンチャー企業の財務部門

急成長中の企業では、資金調達・税務戦略などをリードできる人材が求められています。科目合格者は、制度知識を活かして経営陣のパートナーとして活躍できる可能性があります。

経理実務や決算対応をこなすうえで必要となる「簿記論」「財務諸表論」のほか、「法人税法」「消費税法」などに合格していると知識を有効活用できるでしょう。

■税理士の科目合格者の経験別年収

(1)科目合格の有無で年収はどう変わる?

税理士の科目合格者と、まったく合格していない人(未受験者・受験中・未合格者)とでは、年収に150万円前後の差が出るケースが多くあります。

一方、科目合格者の中では合格科目数によって厳密に差が出るというわけではなく、主には経験年数によって年収の差の開きが出てきます。

経験年数 年収目安
未経験 300万円~350万円
経験3年程度 400万円~450万円
経験5年以上 500万円以上

大手・中堅税理士法人の場合はここに+50万円程度上乗せされるイメージです。

税理士試験の科目合格があっても、実務経験が全くない場合は年収は抑えめになります。未経験からスタートするなら、まずは「年収よりも経験を積む」ことを考えてみましょう。

(2)実務経験+税理士の科目合格で年収がアップする業界・職種

実務経験と組み合わせることで、科目合格の価値はさらに高まり、年収アップも期待できるでしょう。以下は、特に科目合格と実務経験の相性の良い業界や職種です。

① 税理士法人・会計事務所(規模問わず)

【おすすめ合格科目】:簿記論、財務諸表論、法人税法
【歓迎される経験】:記帳代行、申告書作成補助、決算業務補助

税理士法人では、実務経験と合わせて2科目以上の合格者を「実務経験者」として正社員待遇で採用する傾向が強く、年収アップにつながりやすいです。

② 一般企業の経理・財務部門

【歓迎される職種】:経理担当、税務担当、連結決算担当
【合格科目との相性】:法人税法、消費税法、所得税法

税務処理が複雑化する中、社内で税務に詳しい人材が求められています。特に連結決算や四半期開示など、スピード感のある決算対応が必要な企業で重宝されます。

③上場企業・外資系企業の財務・税務部門

【強みになる要素】:国際税務、移転価格税制、BEPS対応
【歓迎されるスキル】:英語力+法人税法の理解

外資系では、国際税務に関する専門知識が高く評価されるため、税理士試験の一部合格でも十分にチャンスがあります。

④コンサルティング会社(FAS・M&A系)

【必要条件】:論理的思考、会計・税務の基礎知識
【評価ポイント】:消費税法や相続税法など特殊税務への理解

コンサルタントとして働く場合、クライアント対応力と知識のバランスが重要です。科目合格に加え、プレゼン力や思考力があると高評価を得られます。

■税理士の科目合格で応募できる求人事例

以下は、会計・経理分野に特化した転職エージェント「ジャスネットキャリア」に掲載されていた求人例です。
実務経験の有無や業界・地域・企業規模・合格科目数などによって年収やポジションにも差があります。

(1)税務会計スタッフ【ITを導入し業務効率化を追求する税理士法人 】

①仕事内容

【具体的な仕事内容】

  • データ入力
  • 試算表作成
  • 決算書、税務申告書作成
  • 各種ご相談対応

※スキルや意欲に応じて、今後IPO支援や人事労務、業務効率化等の業務をお任せします。

【使用ソフト】
freee、マネーフォワードクラウド、弥生、勘定奉行、JDL(税務申告)
②応募条件
  • 税理士試験科目合格(2科目以上)
  • 基本的なPCスキル(Word、Excel)
  • 会計事務所経験または企業の経理経験1年以上
③想定年収 年棒400万円~700万円

(2)会計事務(アシスタント業務)、法人税・顧問業務(税務)【コンサルティングファーム】

①仕事内容

【仕事概要】

  • 記帳代行、決算業務、申告書作成業務
  • 経理支援、事業承継業務等のコンサル支援のサポート

【仕事詳細】
税務会計全般および一部コンサルティング業務の補助に携わっていただきます

  • 仕訳入力、試算表・決算書作成、基礎資料の準備作成
  • 各種申告書作成・申告業務
  • 会社設立支援
  • 巡回業務、お客様の相談対応
  • 電話対応、来客対応 など
②応募条件

【必須条件】

  • 税理士・会計事務所経験2年以上、または事業会社経理経験2年以上
  • 税理士・会計事務所勤務(個人の確定申告、法人の確定申告のご経験)
  • 事業会社経理(年次決算・売掛買掛処理が一通りできる方)

【歓迎条件】

  • 開示書類作成経験
  • 科目合格者(1-2科目以上)
  • コンサル業務補助経験者歓迎(数値入力、EXCELとりまとめなど)
③想定年収 350万円~500万円

(3)リーダー・スタッフ【BPOサービスを担う一般企業の経理管理事業部/ワークライフバランスの充実】

①仕事内容
  • 月次・四半期・年次決算
  • 各種税務申告書作成支援業務 等

※スキルや希望に応じて下記の業務も経験可能です。

  • 連結決算・連結納税
  • 資産流動化SPCの月次・四半期・年次決算、税務申告作成支援業務
  • 社会福祉法人向け会計・税務支援業務
  • スタッフ指導・マネジメント 等
②応募条件

【必須条件】

  • 日商簿記2級
  • 経理業務経験のある方(BPO推進部 リーダー候補)
  • 税理士科目または公認会計士試験合格者(経理管理事業部)
③想定年収 400万円~800万円

■税理士の科目合格で応募できる未経験求人事例

未経験者でも、科目合格をしていることで応募可能な求人は少なくありません。特に育成に力を入れている会計事務所や人材育成型企業では歓迎される傾向にあります。

(1)法人税・顧問業務(税務)、相続・事業承継(税務)【資格支援が充実している税理士法人】

①仕事内容
  • 税務会計業務
  • 資産税業務
  • コンサルティング業務 など
②応募条件

職種未経験OK!

【必須条件】
税理士試験2科目合格以上お持ちの方。

③想定年収 360万円~670万円

(2)経理(決算業務)、経理(税務)、経理(連結決算)【東証プライム上場の接着剤メーカー】

①仕事内容
  • 子会社管理
  • 連結決算
  • 税務申告書作成
  • 開示業務
  • 監査対応
②応募条件
  • 公認会計士の方(短答式合格者可)
  • 税理士の方(科目合格者も可)
③想定年収 500万円~850万円

■税理士の科目合格者が転職で成功するには?

税理士の科目合格者が転職で成功するには、単に合格実績を持っているだけでなく、それを「どう伝えるか」+「どの企業を選ぶか」+「実務経験やポテンシャルとのバランス」が非常に重要です。

以下では、転職を成功させるための具体的な戦略、よくある落とし穴、そしてアピールポイントの作り方まで、徹底的に解説します。

(1)科目合格は“通過点”。過信しすぎないことが成功のカギ

税理士試験の科目合格は確かに評価されますが、それだけで「即採用」「高待遇」になるわけではありません。企業が見ているのは、主に以下のポイントです:

  • 実務でどんな経験を積んでいるか(経験年数・業務内容)
  • 合格科目が業務にどう活かせるか
  • 将来的にどんなキャリアを描いているか
  • チームに馴染めるか(人柄・コミュニケーション力)

つまり、「資格だけで勝負」ではなく、「経験や志向性と組み合わせて価値を最大化する」ことが転職成功のカギです。

(2)自分の“市場価値”を正確に理解する

転職を成功させるためには、まず「今の自分がどの市場で求められているか」を知ることが大切です。

自分の現在地を客観視する質問例:

  • 合格した科目はどれ?(法人税法、相続税法など)
  • 実務経験は何年?どんな業務をしてきた?
  • どの業界・規模の企業で通用しそう?
  • 今後も税理士試験に挑戦し続ける意欲はある?

自分の強み・弱みを整理しておくと、求人選定の精度が上がり、面接でも説得力のある受け答えができます。

(3)求人の選び方:合格科目×キャリアの相性を見極める

税理士科目合格者に向いている求人は幅広くありますが、「何でも応募する」のではなく、「自分の強みが活かせる職場」を選ぶことが成功の秘訣です。

履歴書や職務経歴書では、合格した科目がどのように実務に役立つかを具体的に記載するのがポイントです。

合格科目と相性の良い職場への応募を検討するのもいいでしょう。たとえば「簿記論」「財務諸表論」に合格している人が税理士法人・会計事務所への転職を考えたり、「法人税法論」に合格している人が一般企業の税務部門への転職を検討したりする道があります。

(4)転職エージェントの活用もおすすめ

科目合格者向けの求人は一般求人サイトには出回っていない「非公開求人」も多いため、税務・会計専門の転職エージェントを活用するのも一手です。以下のようなメリットがあります。

  • 自分に合った求人の紹介
  • 面接対策・書類添削サポート
  • 科目合格者歓迎求人の紹介

会計・税務に特化した転職エージェントを利用すると、科目合格者の価値を正しく理解してくれます。各エージェントの紹介先企業に対する知識も深く、それぞれの科目合格者に合った求人を紹介してくれることが期待でき、綿密なサポートで転職まで支援してくれるでしょう。

■まとめ:科目合格は転職の大きな武器になる!

税理士試験の「科目合格」は、単なる中間地点ではありません。専門知識の証明であり、転職市場での有力な武器です。企業は、会計・税務の即戦力として税理士試験の科目合格者を求めており、専門性と継続力を兼ね備えた人材は重宝されています。

今後のキャリアを見据えて、科目合格という実績を積極的にアピールし、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

参考)税理士・科目合格者のための“未経験で会計事務所に就職・転職する”ときに知っておくべきポイント5選
https://career.jusnet.co.jp/tax/tax_04_26.php

執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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