2017年11月16日
今年の6月、安倍政権による新たな成長戦略である「未来投資戦略2017」が発表されました。経済・産業政策、規制緩和等の基本方針が示されることで、毎回注目される同戦略ですが、今年の内容はどのようなものなのでしょうか。会計士に関連する部分を中心に概要をみていきましょう。
今回の未来投資戦略の副題は「Society 5.0の実現に向けた改革」。キーワードの「Society 5.0」とは、IoT、ビッグデータ、AIといったデジタル関連のイノベーションを、あらゆる産業や生活に取り入れ社会課題を解決するとの考え方です。
戦略では、Society 5.0の実現に向け集中投資すべき分野として「健康寿命の延伸」「移動革命の実現」「サプライチェーンの次世代化」「快適なインフラ・まちづくり」「FinTech」を挙げています。しかしSociety 5.0の実現には、まだまだ障害があります。その課題として挙げられているものの中には、会計士業務と深く関わるものもあります。
たとえば、資金調達について。戦略では、イノベーティブなベンチャーへのリスクマネー供給体制が弱いと指摘。M&Aなどのファンド機能を強化、ベンチャーキャピタルへの出資促進などを、政策的に進める考えを示しています。
現政権で、かねてより重点課題となっていたコーポレートガバナンス改革については、コードの遵守などといった「形式」から「実質」への課題が掲げられています。
取り上げられている論点を一部挙げると、企業と投資家の対話の基盤である情報開示が十分に行われていない現状、あるいは開示が複数媒体にまたがっており分かりにくいこと、企業や投資家の行動が短期主義化しているといったことなどを指摘しています。
その対策として、中長期的な企業価値向上に資する開示を図り、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示について制度的に手当てする必要性、また四半期開示の重複開示の解消や効率化などについて、「来年春を目途に一定の結論を得る」との方針を示しました。
そのほか、取締役会についても、中長期の経営戦略について十分な議論がなされていないと問題提起。上場企業における客観性・適時性・透明性ある形でのCEOの選解任や、社外取締役を含め、必要な資質・多様性を備えた取締役会の構成、戦略重視の取締役会の運営に対する適切な評価など、取組の強化を促していくとしています。
会計士は、企業の財務状況の開示、監査に関わるのはもちろん、手法が多様化する資金調達などのコンサルティング、そして社外取締役の就任など、活躍の場が広がっています。Society 5.0という言葉に表されるイノベーション創出のため、直接、間接に、重要な役割を担っているといえるでしょう。