2014年6月10日
内部統制には4つの目的があります。
(1)業務の有効性及び効率性を高める内部統制、(2)財務報告の信頼性を確保する内部統制、(3)事業活動に関わる法令等の遵守を促進する内部統制、(4)資産の保全を図る内部統制です。
内部統制を車に例えると、(1)は事業を高速で前進させるためのアクセル的な要素であり、(2)、(3)、(4)はリスクのある地点で減速し、
周囲を見渡し、交通法規を参照し、走行記録をとらせるための、ブレーキ的な要素と考えられます。
このように、内部統制は企業経営にとってアクセルとブレーキの役割を果たします。
金融商品取引法は上場会社に内部統制の有効性の評価を求めていますが、それが必要になる内部統制は、このうちブレーキに相当する(2)「財務報告の信頼性」を合理的に保証する内部統制です。
しかし、財務報告の信頼性を確保することだけを目的として内部統制を構築していくと、ブレーキ面だけが強調され会社経営のバランスを欠くことになる恐れがあります。
金融商品取引法に対応する上で一番大切なことは、アクセルとブレーキを上手に踏み分けながら、ブレーキとなるチェック機能の落としどころを探っていくということです。
つまり、むやみやたらに財務報告の信頼性を確保する内部統制を構築すれば良いということではなく、
財務報告上のアサーション(正確性)が達成されていることを強く保証する内部統制に焦点を絞り、キーコントロールとして整備・運用されていることが重要になります。
そして、これらのキーコントロールは第三者から確認できることが不可欠です。
経営に対してブレーキ的な要素の強い内部統制は、その必要性は感じていたとしても、そこから利益を生まないため十分に整備されていないケースがあります。
しかしながら、経営者が自ら構築した内部統制を評価するためには、ブレーキを適切にかけ安全性を十分に確保したことが確認できるようにする必要があります。
上述したような体制を整備するための知識・ノウハウは、一朝一夕には得られません。
アクセルとブレーキを上手に踏み分けた内部統制を構築するためのノウハウは、非常に貴重です。
ブレーキを適切にかけ、スピードを落としすぎることなくカーブを曲がっていく。
企業においては事業拡大のために取りうるリスクを残しつつ、安全性を確保する内部統制を適切に構築するバランス感覚が重要です。
公認会計士 南成人