2016年2月4日
会計士が事業会社で役員に就任するケースが増え、日本公認会計士協会でも推進していることはご存知だと思います。役員は主に取締役と監査役を指しますが、業務執行を行う取締役と比べ、監査役の役割はわかりにくい部分があります。会計監査人の監査業務との関係に触れながら、会計士が監査役に就任することの意義を考えてみます。
まず監査役の業務についてみていきます。取締役会が設置された会社では原則として設置義務があり、監査役には取締役会への参加義務があります。監査役に求められる監査業務は大きく二つ、業務監査と会計監査です。
業務監査は、取締役および会計参与の職務執行の監視のこと。職務が法令や定款に違反して行われていないか、という適法性監査等が行われます。会計監査は、財務情報などの作成過程の健全性を確保することです。
大会社などの会計監査人設置会社では、監査役は監査法人や公認会計士が就任する会計監査人が行う監査の相当性を判断することになります。なお、平成26年の会社法改正で、会計監査人の選任や解任などに関する議案の決定は監査役(会)が行うことになったことも重要なポイントです。
現在、日本企業のガバナンスに関する様々な取り組みがなされています。その中で、日本企業において、存在が形骸化する傾向があるとも指摘される監査役の役割が見直されています。
たとえばコーポレートガバナンスコードの原則4-4「監査役及び監査役会の役割・責務」では、「監査役及び監査役会は自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でなく、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきである」としています。
また、監査の質を高めるためには、会計監査人と監査役の適切な関係構築が不可欠です。公認会計士・監査審査会は、「監査役等から会計監査人に対する質問例~会計監査人とのコミュニケーションの活性化に向けて~」を公表し、監査を適切に行うための会計監査人と監査役の相互補完的な関係の重要性を強調しています。
会計監査人として監査を行う会計士の皆さんは、監査役と様々なやり取りをしたことがあるでしょう。取締役と監査役、会計監査人等の関係性が見直される過程において、会計監査人として業務を行った経験がある会計士の価値は高まっていくものと思われます。取締役だけではなく、監査役として会計士を積極的に迎え入れる土壌ができあがりつつあるのかもしれません。