2016年2月25日
資金調達の主要な選択肢の一つである増資。公認会計士として、増資の実施の可否をはじめ、公募や割当等の手法について相談を受けることも多いでしょう。増資は株式価値の希薄化などデメリットについても検討する必要があります。そこで注目されているのが既存の株主に新株予約権を無償で割当てる「ライツ・オファリング(ライツ・イシュー)」です。
増資によって資金調達をする手法として公募増資や第三者割当増資があります。その際に問題となるのが株式価値の希薄化です。出資を受けた際に収益性の高い投資を行わなければ、一株当たりの利益などは減少し、株価下落のリスクがあります。
ライツ・オファリングは、既存株主に対して、市場価格よりも安い価格で株式を購入できる新株予約権を無償で割当てる手法です。新株予約権は取引所で売買でき、割当てを受けた株主は、権利行使をして株式を購入することもでき、新株予約権を売却することもできます。出資を希望しない場合、資金がなく株式を購入できない場合などにおいて、不利益を最小限にすることができるメリットがあるといえます。
新株予約権の発行を実施する際は、会社法上の手続き等、発行までのプロセスをしっかりと確認しておきたいところです。ライツ・オファリングにおいてとくに重要なのは、主幹事となる証券会社と行う「コミットメント型」か「ノンコミットメント型」の契約の選択です。
コミットメント型とは、新株予約権の権利行使がなされなかった時、発行会社がそれを取得して権利者に対価を支払い、証券会社に譲渡して権利行使する方式です。ノンコミットメント型は、上記のコミットメント契約を締結しない手法。権利行使期間内に行使されなかった新株予約権は権利が消滅します。コミットメント型と比べ、ノンコミットメント型は目標とする資金調達額に達しない可能性があるため、新株予約権発行に対する市場の反応を予測しながら形態を選ぶ必要があります。
公認会計士は、コンサルタントとして、あるいは社内の財務責任者として、資本政策の相談を受けることが多くあります。資金調達の手法の立案には、金融的な知識と会計・財務的な知識の両方が必要です。その手段の一つとしてライツ・オファリングについても知識を得ておきたいところです。証券会社との取引についても、会社との間に立ち、専門知識を基にした助言ができるのではないでしょうか。