2017年03月21日
経営上の大きな課題の一つが、設備投資や新規事業などの投資判断。経営者のみならず個人投資家が株式投資をする場合でも同様に重要となります。そこでマスターしたいのが投資の可否を決める投資採択基準です。代表的な基準について、昨今の課題である企業価値向上、コーポレートガバナンスとの関係も併せて考えてみたいと思います。
経営者が設備投資等を行う際や、投資家が出資する際に、重視する指標には様々あり、当然それぞれの経営者や投資家によって判断材料は異なります。
日本の経営では、従来から投資額がどのくらいの期間で回収できるかを計算する「回収期間法」を重視する傾向があると言われていました。しかし、最近では、回収期間法による分析よりも、キャッシュの現在価値を重視した基準が採用されることが多くなりました。これは、企業価値を毀損するような投資を行う企業に、外国人投資家からの厳しい目が向けられていることとも関係しています。
キャッシュを重視した投資採択基準として、正味現在価値(NPV)があります。NPV は、投資する金額と、将来のキャッシュフローの現在価値を、金額をベースにして比べる方法。投資額よりも将来入る現金の現在価値が高ければ、企業価値が向上すると考え、低ければ企業価値が減じると考えます。
もう一つの基準として内部収益率(IRR)があります。IRR は、1期間における収益率を意味し、投資する金額と、将来のキャッシュフローの現在価値が等しくなる割引率とします。このIRRと、投資をする際に求められる資本コストの比率を比べ、IRRの方が大きい場合は、企業価値を向上させる投資であると判断します。
NPVやIRRは、資本コストや資本効率を意識した経営判断を実践するための重要な基準となります。経営において事業の採択・撤退の判断基準とするほかに、投資を募る場合や、IPO、M&Aを行う際などにおいても、これらの基準を正しく理解することは、必須事項といっても過言ではありません。
NPVやIRRは、直感的に理解することができる回収期間法と比べると、表面的に見えにくい概念です。会計士は、ファイナンス知識とコーポレートガバナンスに関する最近の動向、投資家の視点などについて情報提供を行い、企業価値向上の考え方をもとに経営者の意識を変革する助言を行えるようにしたいものです。