2017年8月1日
国際会計基準(IFRS)の普及等により、会計士業務はますますグローバル化しています。そんな中、公益財団法人財務会計基準機構は「国際会計人材」を募り、登録者を公表する制度の構築を行うことを発表しました。今後の展開が注目される人材ネットワークの概要、意義について考えてみましょう。
報道等によると、財務会計基準機構が構築する国際会計人材プール(国際会計人材ネットワーク)は、登録を希望する公認会計士や研究者、企業財務担当者、アナリスト等が同機構ウェブサイトから申請。IFRSに関する実務能力や知識等を審査の上登録し、ウェブサイトで登録者のリストを公表するというものです。
IFRSに関する人材については、政府による『日本再興戦略 2016』でも「IFRSに関して国際的な場で意見発信できる人材のプール」を行うことや、「IFRSに基づく会計監査の実務を担える人材やその育成に係る監査法人の状況について把握し、監査法人に対して適切な取組を促す」ことが言及されており、国際会計人材ネットワークは、その具体化といえるでしょう。
国際的な会計人材を集約することで期待される効果として、日本の実務者、研究者の会計基準に関する意見集約が進み、今後IFRSの基準に関する国際会議の議論などへの影響力が強くなることがあります。
監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)の事務局が東京に設立されたことと併せ、IFRSが世界的な基準として存在感を高める中、日本の会計人が受け身の姿勢で適用するだけではなく、議論そのものへ当事者として参画するための具体的行動として、その意義は大きいでしょう。
国際会計人材ネットワークには 、国際会計基準の議論へのコミットといった公益性をもった役割はもちろんのこと、個々の会計士として注目しておきたい点もあります。それは、国際会計人材として公表された登録者には、IFRSについて最新の動向を含めた専門的な知見をもつ人材としての認知が期待されることです。
今後、IFRSの適用のためのコンサルティング、またIPOなどの支援、企業の社外取締役などにおいて、国際会計人材であることが高く評価される可能性があります。監査法人でも、所属する会計士が登録を目指すなどの動きが起こることが考えられます。今後、新制度がどのように運用され、機能していくか注目していく必要があるでしょう。