2017年01月30日
M&Aという言葉で、文字通り表されるのは合併と買収。しかし、実際は特定の事業を切り離す事業分離による企業再編も盛んです。実務家には、再編手法が複雑化する中、目的に合わせ様々な手法を選択する能力が求められています。今回は、広義のM&Aの手法としての事業分離、とくにスピンオフ、カーブアウトにスポットを当ててみたいと思います。
M&Aという言葉は、よく知られるように合併(merger)と買収(acquisition)の略。しかし、実情としては、株式交換、会社分割、事業分離など、合併や買収が伴わない手法を含む総称としても使われています。とくに事業分離(divestiture)を含む概念であることを示すため、M&A&Dという呼称が使われることもあるようです。
事業分離の手法としては「スピンオフ」と「カーブアウト」がよく知られています。簡単に説明すると、スピンオフは、元の会社との資本関係を維持しながら、事業を独立させて会社を設立すること。社外ベンチャーで新規事業を創出したり、新技術の研究開発を独立して行ったりといった場合によく用いられます。
スピンオフという言葉は、親会社の完全小会社を作るケースのほか、新会社の株式を旧会社の株主に割り当てる手法をとくに指すことも多いようです。なお、元の会社との資本関係がない別会社を設立することを「スピンアウト」ということもあります。
一方の「カーブアウト」は、企業が、外部からの資本参加を受けながら、特定の事業を新会社とすること。スピンオフとの違いとして、ファンドなど第三者からの資本提供を受けることが特徴です。ここでは、高い技術、有望事業をファンドの支援を受けながら独立させ、場合によっては役員の派遣を行いながら、スピードの速い企業成長、IPO(新規株式公開)を目指す手法として注目されています。
スピンオフやカーブアウトなどの手法は、世界的な企業再編、日本企業の選択と集中による企業価値向上など、今日的な話題と関連します。べンチャーキャピタルやバイアウトファンドの動きが日本でも盛んになり、企業と金融機関、ファンドなどで、事業分離による再編の検討、実務研究が進められています。
そこで必要となるプレーヤーがファイナンス知識の豊富な会計士です。コンサルティングファームでM&A(&D)の各手法を駆使しながらディールを成立に導いたり、IPO支援などを行ったり、またバイアウトファンドでは、ファイナンス実務のほか、調査能力を駆使して有望事業を見つけ出し、ファンドを組成し、新設会社にCFOとして参加することも考えられます。事業分離の関連実務は、会計士にとって非常に将来性の高い業務といえるでしょう。