2017年8月30日
公認会計士による会計監査を義務付けられる法人は、増加傾向にあります。平成29年4月1日以降に開始される会計年度から監査が導入されるのが、一定の事業規模を超える社会福祉法人です。監査法人では、法定監査の提供はもちろん、付随するアドバイザリーサービスを開始するなど、大きな変化が起こることが予想されます。
社会福祉法等の一部改正により、会計監査人による監査を受ける義務が生じるのは、最終会計年度における収益が30億円超、または負債が60億円超の社会福祉法人。対象となる法人は、今後段階的に広げるのが既定路線となっており、平成31年度には、収益20億円超または負債40億円超、平成33年度には、収益10億円超または負債20億円超へと順次拡大する予定です。
社会福祉法人への監査導入の背景には、高齢化による医療、社会保障に関する財政支出の増加があります。社会福祉法人の運営には直接的・間接的に財政負担を伴うため、経営組織のガバナンス強化の必要性は高く、事業運営の透明性の向上、財務情報の信頼性確保のための施策が求められているのです。
なお、社会福祉法等の改正では、監査に関する規定以外にも、役員である評議員、理事、監事について、「親族等特殊関係者」の制限も設けられています。企業経営におけるコーポレートガバナンス改革と同様、役員に関する規定でも、社会福祉法人の統治のありかたを厳格化する流れになってきたといえるでしょう。
法改正に伴い、多くの監査法人で社会福祉法人へのサービスを強化しています。同様に監査制度が導入された医療法人とともに、会計監査人への就任だけではなく、監査義務の対象となる法人に対する新たなコンサルティング、アドバイザリーサービスの提供が相次いでいます。
また、今後監査の実施が本格化するだけでなく、義務の対象となる法人の要件が拡大することがほぼ確実であることから、将来的に監査義務が発生することが予想される会計監査人非設置法人でも、予備調査や内部統制体制の整備などの需要が高まることが予想されます。
評議員・理事・監事などの役員に関して法改正が行われたことも、重要です。会計専門家の役員就任が、企業におけるCFOや外部取締役就任のように注目を集めることも考えられます。社会福祉法人特有の会計処理や資金収支計算書、事業活動計算書の理論・実務の研鑽を積んだ人材は、転職の際にも高く評価されることが期待できるでしょう。