2014年10月27日
監査法人に勤務する会計士の転職理由として、「監査以外の複合的な業務経験が積みにくいことに、疑問や焦りを感じたから」というものがあります。
監査業務を行う人は特に、コンサルティングや一般企業でのCFO等のスキルを持っているのか、不安になるものです。
監査の独立性は監査制度の根幹をなす重要な概念です。
独立不羈の精神を持って、決算書の信頼性を担保することが、会計監査を行うすべての公認会計士に求められています。
一方コンサルティングは会社の発展のための手助けをすること。社内の業務を最適化し、確実に資金調達、資金繰りを行い、利益を出し、永続するために積極的な助言を行う仕事です。
表面的には監査と相反する概念であるのは言うまでもありません。
しかし、コンサル企業、あるいは企業内会計士として転職する監査経験のある会計士の姿を見ていると、この概念は必ずしも相反するわけではないということがわかります。
監査業務の経験は、コンサルティングファーム、あるいは企業内でCFOの働きをする際に、極めて重視されるスキルなのです。
監査業務の中で、たとえば営業担当者が返品等を利用した架空売上を計上していたことを指摘した場合、
それが会社ぐるみの粉飾ではない限り、会社に非常に感謝されます。
社内ではなかなか明るみに出ない問題の発見を早期に行うことは会社の利益となります。
また、正確な期間損益がわからない社内体制であれば、経営診断や意思決定にも歪みが生じます。
公認会計士の監査業務は、むろん公益的な目的を持っていますが、間接的に企業価値を高めることになるのです。
最近の、企業における内部監査、内部統制への注目は、それが法令遵守の意味を持つためだけではなく、企業の目標達成のための仕組みづくりとなるからであることを示しています。
監査を行う会計士であっても、業務の中で非監査的な観点から個々の企業の欠点が見つかることは多いでしょう。
監査においてそれを助言することはなくても、その改善方法についてフレームワークを使って説明ができないか、と自己研鑽してみるとよいでしょう。
その見識は、監査業務で会社の内部を深く知り、詳細に調べているからこそ得られます。
ほかの職業で、そのような発見ができるチャンスがあるか、ということを考えると、公認会計士の価値がわかると思います。
転職を検討しているか否かを問わず、監査業務を行う会計士が意識しなくてはならないのが、自らの業務の唯一無二な価値です。
転職の際には、監査スキルにプラスアルファするかたちで、会社の価値を高めるための理論について、
自己研鑽の成果を伝えることができるようにしておくことをおすすめします。