2017年02月06日
M&Aに関する報道等では、業界再編を伴う大企業同士の合併等が中心に取り上げられています。しかしM&Aの主体は大企業だけではありません。中小企業のM&Aも徐々に活発化している現状があります。オーナー経営者の高齢化や後継者不足、そして「地方創生」の課題とも密接にかかわり、会計士ら専門家の積極的なサポートが求められています。
日本企業においてM&Aについて、とくに買収される側の会社にはネガティブなイメージがありました。とくにオーナー企業が所有権を譲り渡すことにはいまだ抵抗が強いのは事実です。しかし、近年では新興企業のいわば「ゴール」として、また従業員や取引先も支持する事業承継方法として、ポジティブな認識が定着しつつあります。
注目が高まっている要因の一つには、政府も推進する「地方創生」があります。日本の各地方には魅力的なすぐれた技術やノウハウを持つ中小企業がたくさんあります。しかし、そのような魅力的な会社が後継者問題を抱えている例も少なくありません。地方の中小企業の事業継続が適切に行わることは、地方経済の活性化、雇用確保、また日本全体の産業力の観点からも重要なことだと考えられます。
中小オーナー企業のM&Aの困難さとして、属人的ノウハウや人脈が価値の源泉となっていることが多く、企業価値の算定が難しいという側面があります。また、会計に関する資料の信頼性に不安があることも課題です。買い手側のデューデリジェンスの困難さだけではなく、評価基準の難しさから売り手側も提示について疑心暗鬼になる傾向がみられるようです。
逆説的ですが、そのような困難があり、また企業価値の源泉が分かりにくい会社の方が、可能性があるという見方もできます。新しい業務を行う場合に、複雑な障害があればあるほど、ブラッシュアップすることで大きな利益を上げることが期待できるからです。しかしそのためには、大企業やプライベートエクイティファンドの着眼に、プロのスキルが必要となるだけではなく、買収後の磨き上げも、腰を据えて行う必要があります。
M&A関連業務は、いうまでもなく会計士として活躍ができる分野です。M&Aの仲介、ディール業務、FA業務、税務コンサルティングなど、様々な分野でチャンスがあるといえます。また、単にディールを成立させるだけではなく、のちの成長に向けたコンサルティング、新しい体制となった企業でCFOとして役員に就任するなど、経営手腕が問われる場合もあります。中小企業M&Aについて、その困難性も含めて理解し、実態に即した業務を行うスキルが求められているといえます。