2014年7月7日
企業はITを様々な業務に利用しており、取引の発生・認識から財務報告までITと係わりのないケースは稀です。
公認会計士は財務諸表監査を行うにあたって、重要な虚偽表示リスクの評価の一環として、ITに関するリスクを識別・評価し、
評価したリスクに対応する手続きを実施することが必須になっています。
公認会計士は財務諸表の監査を行うにあたり、企業の内部統制が有効であるということを前提に試査に基づく監査を実施します。
内部統制が有効であれば、会計記録の正確性と網羅性が担保されているので、精査(しらみつぶしに全ての取引を検証する)ではなく、
試査(一部の項目をサンプルとして抽出し検証することで全体の信頼性を立証する)による監査が行えることになります。
現代の企業は規模が大きく取引量が膨大になっていることから、精査による検証を行うことは物理的に不可能であり、
試査による検証に頼らざるを得ない状況です。
つまり、財務諸表監査の実施前提として有効な内部統制が企業において整備・運用されていることが必要になってくるのです。
そこで、公認会計士は企業の内部統制が、監査が十全にできる程度に有効か否かを判断しなければなりません。
多くの情報システムではITを幅広く利用しており、ITに係る内部統制、「全般統制」と「業務処理統制」が財務報告の信頼性に果たす役割が大きくなっています。
公認会計士が内部統制の評価を行うにあたり、ITに関する専門的知識が必要不可欠になってきているのです。
しかし、公認会計士は会計及び監査のプロフェッションではありますが、深いITの知識は資格として要求されていません。
そこで、ITの知識を補完するため、監査法人では多くのIT専門家を活用しているのが現状です。
監査の実務指針において、IT専門家とは、監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手するために利用するITの専門知識を有する者をいいます。
また、ITの専門知識を有するとは、ITの専門的な技能、知識及び経験を有し、かつ、監査人の監督の下で、
情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別、評価及びそれに対応する手続きを実施する能力を有することをいいます。
現代の企業は飛躍的にITへの依存を高めており、監査現場でのITが分かる内部統制コンサルタントに対するニーズはこれからも益々増えていくものと考えられます。
公認会計士 南成人