2017年06月27日
会計士は、監査業務、また内部統制のコンサルティングなど、粉飾決算をはじめとした不正に関する感度が求められます。その観点から、今注目される業務として、企業の不正調査などを行う「フォレンジック」業務があります。監査法人が現在、フォレンジックのコンサルティングに力を入れており、会計士にとって強みを生かせる、将来性の高い業務のひとつとなっています。
フォレンジックは、米国を中心に発展しました。企業における何かしらの不正に対して第三者チームを組成して内部調査にあたったり、不正防止体制構築のコンサルティングを行ったりといった業務があります。対象となる不正は粉飾などの会計不正はもちろん、着服・横領、情報漏洩、贈収賄、独禁法違反、知的資産のライセンス違反など幅広くあります。
フォレンジックという言葉はとくに、コンピュータネットワーク内のソフトウェアのログ、メール記録などを調査するデジタル・フォレンジックを指す概念として使われます。そこで知っておきたいのがeディスカバリー(電子証拠開示)です。これは米国等の訴訟制度で、企業が損害賠償請求訴訟を受けた場合などに、デジタル資料を自ら収集し、開示する制度のことです。
eディスカバリーを実施する際、適切なデータを収集する体制に不備、隠ぺいなどが疑われる場合、訴訟は極めて不利となり、賠償金の額も大きくなります。フォレンジックの体制がずさんであるために、不祥事の発生時の特別損失が大きくなることも考えられ、コンサルティング業務への需要が高まる背景にあるのです。
会計帳簿や証憑などのチェックは、監査を担当する会計士にとってわかりやすいかもしれませんが、パソコンのログやメールの分析などはほとんどなじみがないかもしれません。実際、直接的なデータ解析等は、IT専門家が行うことが多いでしょう。
しかし、各種のデータ解析結果と、関係者への聞き取りからの情報、財務データを結び付け、不正スキームを描き出すために、会計士は必ず必要です。フォレンジック業務に携わる会計士には、各分野の専門家とのチームワーク、統率する能力が求められます。また、海外とのかかわりが相対的に多い業務であり、高い英語力が求められることも多いようです。
フォレンジック業務は、非監査業務として大きな可能性を持っています。経験・スキルのある会計士にグローバル人材として注目が集まることも間違いないでしょう。比較的新しい業務であるため、今の時点で、同業務への深いスキルを必要とする場合も少ないと思われます。新しい分野にチャレンジしたい、国際的な業務を行いたいという会計士の大きな選択肢になるのではないでしょうか。