2015年10月2日
平成26年に成立した改正会社法に、株式会社の機関設計の柔軟性、自由度を高める制度として、新たに設けられた組織形態があります。それが「監査等委員会設置会社」。企業が求める迅速な意思決定と、充実した監査機能を実現する組織形態として注目されています。
従来、監査に関する組織を置く企業形態として、監査役設置会社、監査役会設置会社、そして監査役を置かず、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置する、委員会設置会社がありました。
改正会社法で新たに設けられた監査等委員会設置会社は、従来の委員会設置会社と同様、監査役を置かず、取締役で組織される監査等委員会を設置する会社です。なお、これにより従来の委員会設置会社は、混同を避けるため、便宜上「指名委員会等設置会社」と呼称されることとなりました。
監査等委員会設置会社の特徴は、取締役会の決議により、業務を執行する特定の取締役に権限を大幅に委任できること。定款で定めることで、重要な財産の処分、多額の借財等、会社法上原則として取締役会の決議を必要とする業務を委任することも可能となります。
業務執行取締役への権限の委任により重要性が増すのがガバナンスの確立です。監査等委員会設置会社には監査役は置かず、取締役3人以上で構成される監査等委員会を置きます。監査等委員となる取締役は株主総会において、その他の取締役とは別に選任され、過半数が社外取締役でなくてはなりません。
監査等委員である取締役の任期は2年。一方、監査等委員以外の取締役の任期は1年と短くなっており、監査等委員以外の取締役が、短期間で信任を受けなければならない仕組みとなっています。
同制度と公認会計士との関係について考えていきましょう。監査等委員会設置会社は、会計監査人の設置が義務づけられるため、会計士あるいは監査法人が必ず関与することになります。また、内部統制システムの整備も義務であり、こちらも監査業務と深くかかわります。
そして、監査等委員会設置会社には、現在会計士業界で大きなテーマとなっている社外取締役の設置義務があります。監査等委員に就任する会計士も登場するでしょう。会計士が制度上重要な役割を果たすことになる新たな会社機関について、個々の会計士の皆様も、早めに実務に即した知識を身につけておくべきでしょう。