2016年9月6日
新株予約権は、資本政策、資金調達の手段のほか、企業規模にかかわらず様々な用途で利用されています。機動性ある財務戦略のためには、発行時に実務をスムーズに行うことが肝要です。公認会計士として、法律的な視点でどのようなものなのか、知っておくべき手続きや効果などをまとめてみました。
新株予約権とは、株式会社に対して、期限内に行使することにより株式の交付を受けることができる権利です。あらかじめ決められた金額で株主となることができるため、株価が上昇したときなどは有利な条件で株式を取得できます。
活用する場面として資金調達が必要なときがあります。新株予約権を有償で付与した場合、借入金とは異なり返済の必要はなく、その時点では株主構成に変化はありませんので、機動的に資金が調達できます。また、新株予約権を社債とともに発行することもできます。
また、あらかじめ安定株主になってくれる人に新株予約権を付与しておき、敵対的買収を仕掛けられたときに発行できるように備える買収防衛策、後継者に新株予約権を持たせる事業承継対策、役員や社員へ付与し、業績アップのインセンティブとするストックオプションとしても広く利用されています。
新株予約権を発行する際は、株主総会で募集事項を決定することになります。募集事項は、新株予約権の内容・数、1個あたりの払込金額またはその算定方法、無償発行の場合にはその旨、割当日、払込期日等です。
新株予約権の登記を行わなくてはならないことにも注意が必要です。登記事項としては、発行可能数、発行済数等です。申請の際は、株主総会議事録や新株予約権の引き受けの申し込みを証する書面などを添付する必要があります。登録免許税は9万円です。また、行使すると発行済みの新株予約権は減少し、また新規株式を発行、あるいは自己株式の付与を行うことになりますので、適宜その旨を登記する必要があります。
新株予約権は、用途が幅広いことから大企業だけではなく、中小企業においても注目度は増しています。様々な業種・規模の会社で資本政策が多様化していくなかで、ますます利用が拡大すると考えられますが、実務の煩雑さから、中小企業には縁遠いとの認識があるのも事実です。また、発行後は取り消すことはできず、発行済新株予約権の影響は、潜在的に長く残ることになります。
会計士が、会計的な知識はもちろん、発行実務やメリットについて知っておくことで、実行の判断などにもアドバイスを広げることができるでしょう。発行者側、取得者側の両面から、会計処理と税務上の取り扱いを整理し、会計税務とともに、企業のステージに合わせて経営へのメリット、リスク等をアドバイスできるようにしておきたいところです。