2015年10月29日
公認会計士や監査法人が就任する会計監査人の設置会社では、監査役が会計監査人の監査の方法・結果の相当性を判断する役割を担います。そこで気になるのが、監査役から会計監査人にどのような質問が行われているか。今回は、会計監査業務を見直すきっかけを与える、監査役からの質問例について取り上げてみたいと思います。
公認会計士・監査審査会は7月、平成 27 年の「監査事務所検査結果事例集」の参考資料として、「監査役等から会計監査人に対する質問例~会計監査人とのコミュニケーションの活性化に向けて~」を公表しました。
これは、「監査役等と会計監査人とのコミュニケーションの際の参考となるよう」作成されたもの。「監査事務所の品質管理に関する質問例」6例と、「当社の監査計画と監査業務に関する質問例」14例が紹介されています。
「監査事務所の品質管理に関する質問例」では、監査の品質を向上させるための取組の内容及び頻度、評価と改善の方法のほか、監査事務所の社員が個人事務所を持っている場合、担当監査業務の品質を維持・向上するのに十分な時間をどのように確保しているか、といったリアルな質問も取り上げられています。
「当社の監査計画と監査業務に関する質問例」では、対象企業の監査チームの編成基準、被監査企業の属する業界の環境変化への認識、重要なリスクとその対応、連結子会社への監査手法、内部統制の評価の仕方等々、被監査企業の特質と、会計監査の理論双方に、深い理解が必要となる質問が数々挙げられています。
現在、会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの策定等、企業のガバナンス確保のための機能を強化することで、長期的な企業価値向上につなげるための方策が実施されています。会計監査人と監査役等が、コミュニケーションを充実させ、緊張関係を保ちながら相互理解を深めていくことは、それらの方策の実効性を担保するための要となります。
会計監査人は、監査役等から正しく情報を引き出しながら、自らも監査業務の内容等について説明責任を果たす必要があります。「質問例」で挙げられた鋭い質問の数々を実際に投げかけられることを想像しながら、現在行っている監査業務について今一度見直してみることで、監査業務を行う公認会計士の皆様は、多くの気づきが得られるのではないでしょうか。