2015年8月18日
平成27年3月、金融庁と東京証券取引所を中心に組織される有識者会議で議論されていた、上場企業の企業統治の指針「コーポレートガバナンス・コード」の最終案がまとめられました。以前から議論の過程が公表されていたこともあり、平成27年6月末の決算でも、上場企業でコードに準拠する会社が多くみられました。
「コーポレートガバナンス・コード」は、上場企業の株主の権利、投資家との対話、取締役会のあり方、役員報酬などに関する行動規範。政府の成長戦略のもと、日本企業の国際競争力を高める施策の一つとして打ち出されました。
具体的な項目で、最も注目されていたのは、平成26年会社法改正で義務化が見送られた社外取締役でしょう。コードでは、上場企業について「社外取締役の人数として最低2名、望ましい水準として3分の1」とされています。
社外取締役の確保など、コード準拠のための企業の対応に焦点を当てた報道が多かったことで、コードの性格の一部が強調された印象もあります。同コードで、とくに強調されるのが「攻めのガバナンス」です。
ガバナンスという言葉は、不正の防止やコンプライアンス等のイメージが強くあります。これはいわば「守り」のガバナンス。コードでは、重要な課題として日本企業のROE(自己資本利益率)の向上が掲げられており、意思決定機関の整備、投資家との対話の確立により、会社の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上を目指す組織づくりに重点があるといえます。
コードには法的な拘束力はありませんが、拘束力がないからこそ、どのようにコードをとらえるかということで差別化され、投資家の評価を受けることになります。いわば「ソフト・ロー」として上場企業、そして上場を目指す企業に大きな影響を与えることになるでしょう。
コードの特徴として、厳格な規制ではなく、抽象的な原則を規定するプリンシプル・ベースの手法があります。これはIFRSでも使われる言葉のため、会計士にはなじみのある言葉かもしれません。また、規定に準拠するか、しない理由を説明するかを選ぶ「コンプライ・オア・エクスプレイン」の原則も貫かれています。
会計士にとっては、主に「守りのガバナンス」の知見が求められる外部監査・内部監査、そして、「攻めのガバナンス」を実現する経営コンサルティングにおいても、経営戦略に深く関わる企業内会計士、CFO等の業務を行う上でも、コードの内容が大きな示唆を与えてくれるはずです。
ルール順守の観点だけではなく、コードが何を目的としているかという、プリンシプルをとらえつつ、実際の会社の事例をみながら、文言だけではなく実感として、コードに実効性を持たせるために何が必要なのかということを、自らの見識で補完する意識が重要なのだといえるでしょう。