2016年4月4日
日本企業のコーポレートガバナンスについての議論が高まっています。その中で、かねてより語られている日本企業の課題として株主総会の日程集中があります。この問題について、最近改めて議論が盛んに行われるようになっています。株主総会の日程の分散をめぐる議論の現状、背景について考えました。
日本にはご存知の通り、3月末に決算期を迎える企業が多く、その大半が期末を基準日とし、6月下旬に株主総会を開いています。東証によると、2015年の3月期決算の上場企業の41.35%が6月26日、18.79%が6月25日、13.58%が6月24日に株主総会を開催しています。
日程集中について、複数企業の株式を保有する株主が株主総会に参加しにくくなるなどの指摘は昔からあり、近年は分散が進んでいます。株主総会開催が最も多い日への集中率は、90年代は9割を超えていましたが、その後、急激に下がり、近年は40%前後となっています。
そして昨今、コーポレートガバナンスへの関心の高まりから、投資家からのチェック機能、株主との対話による企業価値の向上の点から改めて注目される機会が多くなり、再び株主総会開催日の分散についての議論が高まっています。また、最近の社外取締役の設置推進も影響しているものと思われます。複数の企業の社外取締役となるケースが多くなるため、株主総会の日程集中の弊害が顕在化することが懸念されています。
金融当局の動きも気になるところです。金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の2015年11月に行われた議論の中で、株主総会日程について触れられています。
会議で議論の対象となったのが「基準日」について。会社法上、権利行使基準日から3カ月以内を権利行使日とすべきとされているため、日本では3月末を基準日とし、6月末までに総会が行われるケースが多いと整理。一つの考え方として、基準日を変更することで、株主総会開催日を7月にする可能性等に言及しています。
決算期や基準日は当然、企業が決めることです。しかし、日程分散化の議論が進み、市場からの注目が高まることで、総会開催日を変更する企業が現れてくることは十分に考えられます。その際には会計士業務にも大きな影響があるでしょう。
総会日程の変更が行われるケースに立ち会い、助言を求められることも考えられます。金融当局の意向、市場の反応に注目しながら、監査や証券報告書、決算短信、事業報告書などとの関連も含めて、関連法制を改めて確認しておきたいところです。