2016年2月1日
多くの株式会社の目標となっているのが上場。しかし最近、倒産や不正による上場廃止ではなく、大手企業の経営者が株式を買い上げて上場を取りやめ、あえて非上場を選ぶケースが増えていることが話題となっています。今回は、非上場を選ぶ理由や背景、メリット・デメリットなどを考えてみます。
非上場化の手法として企業の代表取締役や経営陣が設立した持ち株会社が市場に出ている株式を買い付ける、MBO(マネジメント・バイ・アウト)があります。
有名企業のMBOは、実施されたケースはもちろん、検討を行っている、あるいは、資金調達の困難から実施を断念したといったニュースも大きく取り上げられることが多くなり、注目度が増していることは間違いありません。
非上場であることのメリットは、敵対的買収の防止や、機動的な経営判断が迅速に下せることがあります。また、短期的な利益を求められる傾向があるといわれる株主の声を気にせず、中長期的な投資が行えることから、長い目でみた企業価値の向上につながる可能性があります。
一方デメリットとしては、巨額の資金が必要となるため、銀行借入、ファンドによる出資など資金調達に困難が生じ、経営者らの財務状況を大きく損ねてしまう危険性があることが挙げられます。ファンドが株式を取得した場合には、その後の売却先も大きな課題となります。
また、経営者の持ち株比率が極めて高くなり、株式の流動性が下がることにより、会社の市場価値が明確でなくなること、ストックオプションなどのインセンティブが働きにくくなることなども課題です。そして、株主からの経営全体へのチェックが働きにくくなるため、不適切な経営が行われるリスクなども指摘されています。
意思決定のスムーズさとチェック機能への不安に表れるように、非上場化によるメリットとデメリットは、背中合わせの関係です。非上場化を行う際は、長期的にみて、実施することが会社にとってプラスになる必要があります。そして、その目的や効果をはっきりとステークホルダーに説明することが必要となるでしょう。
非上場化における会計士の役割は、可否の検討にはじまり、デューデリジェンス、資金調達における高度なファイナンス等、多様な観点からの支援が求められます。実際に携わることはそれほど多くないかもしれませんが、MBOは事業承継や親子会社関係の解消などにおいても多く使われる手法であることから、実務の流れをつかんでおくことは非常に有用だと思われます。