2015年12月21日
組織再編や会計基準の適用に際し、親子会社、グループ企業で決算期を統一し、同時期に財務諸表を作成する体制を整える必要が生じることがあります。財務諸表の作成や、財務・税務コンサルティングを行う公認会計士も、決算期統一に関わる機会は多くなっているようです。今回は、統一が必要になるケースや実務について解説します。
決算期統一へのニーズとしてまず挙げられるのは、会計基準の適用に関するもの。たとえばIFRS(国際財務報告基準)では、連結財務諸表の作成に用いる親会社と子会社の財務諸表は、同日現在で作成しなければならないとされています。また、年度終了日が異なる場合は、子会社が親会社の決算日に合わせて仮決算を行う必要があります。
その他、M&Aでの株式取得により他社を完全子会社とする場合も、企業間で決算期統一が図られることがあります。クロスボーダーM&Aの増加から、3月決算の多い日本企業が、12月決算の多い海外子会社と決算期を統一するケースも増えてきました。
決算期を統一することにより、決算による事務作業が軽減されることや、連結決算による財務情報の管理強化に繋げられることが期待できます。しかし、決算期の統一にはイニシャルコストがかかります。
システムの変更や決算にかかる設定変更が必要となるほか、財務・経理部門に混乱が発生し、大きな労力がかかることも考えられます。変更後の事後モニタリングも欠かすことのできない作業です。また、決算期を統一する際、子会社においては決算を早期化しなくてはならないことも大きなハードルです。
また、会社法では、事業年度は多くの会社で定款の記載事項とされていることから、決算期変更には定款変更が必要となります。定款変更をするには株主総会で特別決議を得る必要があり、法務上のプロセスを確実に踏む必要があります。
決算期の統一は、外部の法律専門家、会計専門家等が指導して行うことになります。そして、よりスムーズに実行するためには、企業内会計士・CFO(最高財務責任者)など社内の専門家との連携が重要です。内部・外部の会計士が協力して活躍することになります。
決算期統一は、いわば企業文化を大きく変える重要な仕事。メリット・デメリットを勘案しながら、統一を行うか否かを含め、最適な計画を探ることが求められます。税務、会計基準、会計システム整備、企業法務等、多くの知識をフル活用して行うことから、会計士として手掛けた経験は、将来のキャリアのためにも有益なものとなってくれるでしょう。