2016年11月28日
会社は様々な形で資産を持っていますが、最近会社の資産すべてを「企業価値向上」の観点から洗い直し、投資効率を高める最適な形を模索する動きが盛んになっています。今回はその中で、会計士が活躍できる分野として、会社所有の不動産を意味するCRE(Corporate Real Estate)に関する戦略について紹介します。
不動産は企業にとって重要な資産の一つ。しかし、不動産の所有は価格変動によるマーケットリスク、固定資産税などの税務リスク等を抱えています。不動産価格が上がり続ける状況にない場合、価値が減じ、さらにコスト要因となることがあります。
そこで求められるのが、企業が持つ不動産の取得・所有・管理・賃借・売却といった計画について、トップマネジメントが専門家の意見を集約し、意思決定を行うこと。たとえば遊休不動産は、売却あるいは賃貸物件の建設など様々な選択肢について、利益やキャッシュフローを検討し、適切な手を打っていく必要があります。
事業用の不動産は、利益を創出するための経営資源ですが、採算性の悪い部門をカットしキャッシュを確保、収益性の高い事業に再投資することができます。また、事業用不動産を売却したうえで賃借するリースバックを行いオフバランス化する手法もあり得ます。いずれにせよ、不動産単体ではなく、事業全体を総合的に見て戦略を練る必要があるでしょう。
CRE戦略への注目は、グローバル化の進展による海外投資家の増加、会計基準のコンバージェンスなどによって、企業の投資効率、企業価値の向上に注目が集まり、所有不動産が利益を生み出さない状況に、ステークホルダーから厳しい目が向けられるようになったことが背景にあります。
その傾向は、固定資産の減損会計、M&Aの際の時価評価、あるいは国際会計基準(IFRS)等の時価開示の導入等、各種の制度によっても後押しされており、これらを踏まえた戦略が求められます。CRE戦略には、会計・税務、証券等の制度を詳細に知り、開示情報への影響をも考慮して行う人材が必要となりますが、そこで期待されるのがこれらの知識を網羅する会計士の存在です。
企業価値の向上は現在の日本企業の最重要課題となっています。そのような状況下、CRE戦略は経営コンサルティング、事業再生やM&A、IPOなどとともに、会計士業務で広く求められることとなるでしょう。不動産鑑定士や不動産事業者など他の専門家とも連携しながら、不動産の知見を会計業務に落とし込み、精度の高い業務が行えるようになりたいものです。