2016年10月17日
6月、政府の経済政策の指針となる「日本再興戦略2016」が閣議決定されました。論点は多岐にわたりますが、企業の内部留保を有望事業への投資に回すことの重要性、その絶対条件となるコーポレートガバナンスの強化の考えは一貫しているようです。会計士が大きくかかわる部分でもあるため、内容を確認しておきたいところです。
日本再興戦略2016の副題は「第4次産業革命に向けて」。「GDP600 兆円」を目指した経済の持続的な成長のために、①新たな「有望成長市場」の戦略的創出、②人口減少に伴う供給制約や人手不足を克服する「生産性革命」、③新たな産業構造を支える「人材強化」という3つの柱を掲げ、無人自動車やフィンテック、ビッグデータ、医療や農業の新技術等、幅広い事例を挙げて成長産業と生産性向上の方策等を分析しています。
数多くの論点の中で、会計士に深く関連するのはコーポレートガバナンスに関する記述です。日本再興戦略2016では、「コーポレートガバナンス改革は、成長戦略の最重要課題である。その位置付けに変わりはない」と宣言。企業の情報開示について「スチュワードシップ・コード」の理念である企業と投資家の対話を促進する観点を重視し、そのための基盤として「企業の情報開示の実効性・効率性の向上」のための制度を整備する方向性を示しています。
具体的施策としては、会社法、金融商品取引法、証券取引所上場規則に基づく制度開示の項目の整理や重複解消等を挙げています。
まず本年度中に「事業報告等と有価証券報告書を一体的に開示する場合の関係省庁の考え方等の整理と共通化可能な項目に係る具体的な進め方の決定」を行うとしています。そして、本年度中に順次開始するのが「四半期開示に関する決算短信の見直しの内容、その影響や効果の評価・分析と、今後の必要な改善点の把握」。最終的な目標といえる「国際的に見て最も効果的かつ効率的な開示の実現及び株主総会日程・基準日の合理的な設定のための環境整備」について、2019 年前半を目途に実現を目指すとしています。
日本再興戦略2016で改めて感じるのは会計士の重要性です。会計士は企業の財務担当者として、また会計監査人として、市場の信頼性を担っており、その信頼性が、同戦略に示された成長戦略すべてに影響するといっても過言ではありません。情報開示に関する制度がどのように変更されていくのかは、今後の議論にかかっていますが、会計士の現場の声を取り入れた実効性の高い制度になることが望まれるところです。