2016年7月4日
M&Aのアドバイザリーの業務では、合併等にかかる法的手続きが必須です。とくに再編に反対するステークホルダーの扱いは、M&Aにおけるリスクの一つとして必要不可欠なポイントとなるため、法務の専門家ではなくとも知っておきたいところです。今回は代表的な手続きとして、M&A時の債権者保護、株主保護に関する法律を確認してみましょう。
合併等は、当事者となる双方の会社の債権者にとって債務者の変更等を伴うため、債権者保護手続きを行う必要が生じます。たとえば吸収合併を行う際は、当事者となる両社で原則として官報告知と債務者に対する個別の催告を行い、異議を述べた債権者に弁済や担保提供などを行わなければなりません。
会社分割を行う場合にも、原則として債権者保護手続きが必要となります。ただし、分割会社の債務が移転せず、そのまま分割会社に請求が可能である場合は、債権者保護手続を行う必要はありません。債権の移転に関する契約内容によって手続きが異なることになりますので、確認しておきたいところです。
債権者保護手続きとともに、M&Aの際に実施することが多いのが株式買取請求で、同制度は、既存の株主保護のため、一定の事業譲渡、合併、分割などの際、反対株主が会社に対し保有株式を公正な価格で買い取ることを請求できる制度です。
再編に反対する株主は、合併等を決議する株主総会に先立ち、会社に反対の旨を通知し、総会において反対の意思表示をすることで、保有する株式の買い取りを請求できます。この価格については、会社と株主が協議し、整わない場合は裁判に持ち込まれることになります。
企業再編の報道が相次ぎ、M&Aアドバイザリーを手掛ける会計士も、大きくビジネスが動く局面として注目していることでしょう。M&Aで会計士が携わる業務としては、財務デューデリジェンスなど会計に関連するものとなりますが、M&Aを進めるうえでの手続きについても基礎知識を備える必要があります。
債権者保護手続き、株式買取請求といった、再編に反対するステークホルダーの扱いは、ディール成立までのリスクとして想定しておくべきことです。とくに株主保護については、株価算定も大きな問題となるため、会計知識が必須となります。法務に関する実務を行う弁護士等と緊密に連携できる会計士がスムーズにディールを進めるためのキーマンとなるため、スキルある人材が求められている状況です。