2015年3月13日
2014年は、リーマンショック後の2009年から継続しているIPO(新規株式公開)の増加傾向が引き続き見られ、景気回復傾向の表れとして好感されています。
それに加え、2014年5月に成立、2015年4月から施行される改正金融商品取引法で、新規上場企業の内部統制報告書監査に関する規制の緩和が行われたことも、
この傾向を後押しするものとして注目されています。
これまで、新規上場のハードルとして、内部統制報告書への監査に関する負担が重いということがありました。
統制体制の整備はもちろん、監査法人への監査報酬が上場のハードルとなっている面は否定できませんでした。
これについては、経営者や会計士らから、新規上場企業は上場前に内部統制について厳格な上場審査を受けていること、
また米国等、上場基準が厳しい国においても内部統制監査を免除する規定が置かれていることなどから、改正の必要性が指摘されていました。
改正金商法では、資本金100億円未満、かつ負債総額1,000億円未満の新規上場企業は、内部統制報告書の提出自体は必要であるものの、
3年間、内部統制報告書の監査が免除される規定が盛り込まれました。
企業の視点からは、報告書の作成コストは従来通りですが、監査法人による監査報酬の負担が大きく下がることになります。
ただし、監査を受けることが妨げられているわけではなく、従来通り監査を受けることも可能となっています。
改正金商法によって、監査法人は、新規上場企業の直接的な監査業務が減少します。
ただ、上場企業が増えることでゆくゆくは監査義務を負うことになり、好影響を受けることになるでしょう。
また、IPOに関するコンサルティングを行う監査法人の活況も予想されます。
ただし、新金商法による内部統制監査の免除を受けるには、財務局の証券監査官から財務諸表や内部統制報告書のレビューを受ける必要があるため、
監査免除の対象となりうる新規上場企業であっても、戦略として監査をはじめから行うことを選択する企業もあるものと考えられます。
これは、IPOの際の内部統制チェックについて、選択肢が広がったことを意味します。
上場を支援する会計士としては、会社の実情に合わせ最初から監査を行うことが適切であるか否かを含め、
最適な提案を行うことが求められてくるのではないでしょうか。会計士が行う支援業務の重要性が高まりつつあります。