2015年4月6日
企業の社会的責任(CSR)の取り組みへの関心が高まり、IR情報として重視されるようになりました。 そして、それに伴いCSRをコーポレートブランドの確立、企業価値向上のため積極的、かつ戦略的に活用する企業も増え、 CSR報告書の作成などに関するコンサルティング業務を提供する事業者も増えています。
CSRに関する報告書は、任意のものですが、多くの企業がIRとして公表しています。
この企業の動きを大きく後押ししたのが、2010年にCSRの国際的なフレームワークとして策定された「ISO26000」です。
「ISO26000」は他のISO規格のように認証を目的とするものではなく、ガイダンスとして指針を示すもの。
CSRの射程は幅広いため、要件を決め、第三者が認証する形態にそぐわないと考えられたものと思われます。
そして、「ISO26000」ではCSRで取り組む中核的な主題として以下の7つが挙げられています。
・組織統治
・人権
・労働慣行
・環境
・公正な事業慣行
・消費者課題
・コミュニティ参画および開発
多くの企業の報告書では、自社の取り組みについてこのカテゴリに分けて記載を行っており、また構成等も「ISO26000」に則って行っています。
世界的フレームワークとしての定着度が高まり、より活動の中身への評価が行いやすくなっている状況ともいえるでしょう。
CSRは、コーポレートブランドの確立に寄与し、長期的に企業価値を高める効果を生み出します。
その端的な事例として、証券各社でCSRの評価の高い企業の株式によるファンドを組成していることがあります。
ファンドの組成はとりもなおさず株式の売買に直結し「企業戦略としてのCSR」という考え方が現実的なものであることを感じさせます。
CSRの戦略的側面を重視した概念としては、CSV(共通価値の創造)があります。
これは経営学者のマイケル・ポーターらが提唱したもので、自社の業種に近い分野で発生する社会問題の解決に、専門性を活かし取り組み、
ビジネスの機会を創出することで企業の継続的な発展を実現しようという考え方です。
具体的には、知識・技術集約型の企業が教育分野への支援を行ったり、資源・エネルギー分野の企業が環境整備のための活動を行ったりといったことが考えられます。
そのような状況にあるなか、戦略的なCSR、CSVの考え方を取り入れた課題の設定、具体的な取り組みに関する提案、
ISO規格をもとにした報告書の作成、公表方法の助言などを行う、監査法人やコンサルティングファームが増えています。
そこで重要な存在となるのが財務報告・内部統制等、企業価値を測るための報告に携わる会計士の存在です。
今後、財務諸表とともにさらに注目される可能性のあるCSR報告書に関して、知識とスキルを持つ会計士の評価が高まることが期待できます。