2015年11月16日
関西地区は、中小企業を中心に高い技術を持った製造業の会社が集積しています。この「ものづくり産業」をさらに活性化させることが地域経済のカギ。今回は関西経済連合会がとりまとめた「ものづくり産業研究会報告書」から、関西の製造業の未来、そして会計人としてどのようにかかわっていくかを考えてみましょう。
報告書では、関西の製造業の特徴として、素材や部品といった「基礎素材型産業」の比率が高いことを挙げています。関西の基礎素材型産業は、数多くのメーカーのサプライチェーンの「川上」として幅広い会社に製品を提供しています。
関西製造業の技術の高さを示すものとして、報告書では経済産業省が平成26年に選定した「グローバルニッチトップ(GNT)企業100 選」の100社のうち29社が関西企業であったことを紹介しています。
その技術力を担保するのが、うめきたナレッジキャピタル、けいはんな学研都市、神戸医療産業都市に集積する大学、研究機関等。関西地区が国際イノベーション特区、国家戦略特区に指定されていること、歴史的にアジア各国との経済的なつながりが強いことなども強みとして挙げています。
しかし現在、関西の製造業には課題もあります。特に報告書で強調されるのが、電気機器産業等の生産拠点の海外移転。そこで製造業の活性化を図るための目標として報告書が提言するのが「ものづくり拠点」としての関西です。
ものづくり拠点は、グローバル化をマイナス要因とするのではなく、企業、研究機関、知的創造拠点の集積を活かして高付加価値の素材、部品を提供し続け、関西地方をグローバルサプライチェーンの一翼を担う企業が集積する地域にしようとするもの。多様な人材の集積・交流による「オープンイノベーション」で、価値を創造する製品を生み出し、発信し続ける地域を目指すべきだとしています。
ものづくり拠点としての関西地域で、企業活動を支える会計士・税理士が身につけておくべきスキルとしては、特区に関する税制のほか、研究開発や設備投資に関する税制、ベンチャー等の支援税制、資金繰りの支援など、新規投資をスムーズに行うための会計・税務が挙げられます。
また、グローバルサプライチェーンの一翼を担おうとすることにより、国際税務、海外取引の際の信頼性を担保する会計情報の整備、M&Aなどによる海外企業との資本関係、ITシステムの統一、シェアドサービスによる会計情報の一元化などの業務も注目を集めることになります。製造業の発展は、関西地域の会計人に専門性の高い業務を行う機会を提供する可能性を秘めているのです。