2017年11月9日
金融資本のグローバル化により、日本企業は外国人投資家からの目を、強く意識せざるを得なくなっています。その主体として、株主となる外国の機関投資家はもちろん、株主の意思決定に大きな影響を持つといわれる「議決権行使助言会社」の役割に注目が集まっています。
議決権行使助言会社とは、国内外に多数の企業株式を持つ機関投資家に、投資先の株主総会の議決権をどのように行使するかアドバイスする会社のこと。日本でも、米国の有名議決権行使助言会社の動向がニュースとなることが増えてきました。
現在、日本の上場企業における海外投資家の株式保有割合は3割程度といわれ、その株式市場における取引数は6割を超えるといわれます。
昨今議論される日本企業のコーポレートガバナンス改革の流れも、その国際的な投資環境に合わせてのもの。世界的な有名企業による会計不正が明らかになったこともあり、日本企業のガバナンスへの目が厳格化しています。外国投資家の議決権行使に資する情報を提供する助言会社の存在感の高まりにも、こうした背景があります。
もう一つ注目されるポイントとして、有名な議決権行使助言会社が、日本企業の株主である投資家への「議決権行使助言基準」を公表していることがあります。基準では、総会で議決される議案に対し、どのような場合に賛成あるいは反対の意を表するよう助言するのかが示されています。
公表されている有名助言会社の基準では、株主総会で議論される計算書類の承認や、社外取締役を含む役員の選任、役員報酬、M&Aなど、総会で挙がる議案それぞれに、議決権行使の基準を示しています。方向性としては、ROEなどの資本効率、役員のパフォーマンスなどの重視が感じられるものとなっています。
このような基準が公表されること自体が、日本企業全体へのガバナンスに対する要求であるとみることもできます。日本企業が今後、さらに議決権行使助言会社の動向に注視することになるのは間違いないでしょう。
会計士は監査のほか、コンサルティングやアドバイザリーなど様々な業務で、財務会計の知見から、コーポレートガバナンスの在り方をつぶさに見る存在。海外投資家がどのように市場を見ているかという、議決権行使助言会社のリアルな認識に、気づきを得られる部分が多いのではないでしょうか。