2017年9月5日
公認会計士は、国家資格保有者であるだけではなく、専門知識とスキルを売るプロフェッショナル。監査業務に限らず、依頼者にとって高い価値のある助言などの提供を行い、報酬を得ることのできる職業です。現在DVDでリリースされている『ザ・コンサルタント』では、現実離れした設定ながら「仕事人」としての会計士の姿が描かれています。
『ザ・コンサルタント』の主人公は、田舎町のありふれた会計士。しかしその実態は、裏社会から依頼を受け、ブラック資金に関する会計業務を行うコンサルタントです。大物アウトローの秘密を握る仕事のため命が危険にさらさることも多く、百発百中のスナイパーで、武術の達人でもあります。
本作では、主人公が大企業から財務不正の調査依頼を受け、天才的な分析能力で不正の全貌を暴きつつあったとき、調査が突如打ち切りに。不正に関する秘密を知る関係者が、次々に命を狙われる事態に発展します。詳しくは書きませんが、敵方となる相手、そして主人公の正体をほのめかす意外なラストには驚かされること請け合いです。
『ザ・コンサルタント』は、刺激的な描写が連続するアクション映画ですが、会計士として気になるのは、やはり会計コンサルタントとしての描写でしょう。大企業の財務調査で、決算書や帳簿、膨大な取引記録を分析し、猛スピードで窓ガラスに数字を書き込み、不正を暴いていくシーンは圧巻です。
暴かれる不正は、架空支払いと循環取引による利益操作であり、インサイダー取引、株価操縦、会社乗っ取りの思惑などが絡みます。映画ではスキームが詳しく描かれているわけではなく、何が行われたのかわかりにくい部分もあるのですが、会計専門家の皆様が見るとさまざまな発見がありそうです。
そのほか、「表の姿」である田舎町の会計士として、老夫婦の相談を受け、自宅を「事業用」として申請すれば節税できることをアドバイスするシーンもあります。米国の税制はわからなくても、会計コンサルタントのリアルな姿が垣間見られ、会計士・税理士であればなんとなくニヤリとしてしまうでしょう。
主人公は、依頼された財務調査は、恐るべき集中力で完遂するという人物造形。そのキャラクターが、巨大な闇を暴き、企業の運命を大きく変えていきます。徹底した第三者として調査をするところにインパクトがあり、公認会計士の仕事の意義を考えさせられます。
また、映画の原題は「The Accountant」で、そのものずばり会計士。法定監査を行うイメージが強い日本と比べ、米国の会計士は、いわゆるCPAとしての業務を行うだけではなく、個人の能力を活かしてさまざまな仕事を請け負い、報酬を得るプロフェッショナルというイメージが強いことがうかがえます。裏社会に生きる「アンチ・ヒーロー」の主人公ですから、それを「見習う」というと語弊がありますが、プロの会計士としてそうあるべきか、何らかの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。