2015年12月14日
企業内会計士の活躍の場が広がり、監査法人の法定監査業務を経験した人が、そのスキルを見込まれて一般企業に採用されるケースも増えてきました。法定監査経験者が一般企業で強みを持つ業務の一つが、同じ監査という言葉が使われる内部監査です。今回は内部監査で特に期待される能力などについて考えていきます。
内部監査という言葉にはっきりとした定義はありません。内容が法定される公認会計士監査と異なり、内部監査では会社が自らの決定で行うもの。実施するのは基本的に内部の社員です。
内容も多様です。IPO新規公開株準備のために行う法定監査の予備演習的な会計監査から、業務改善のためのコンサルティングに近い形のものもあります。不正を発見するための監査にも、会計不正だけではなくあらゆる企業内不祥事について、原因特定、再発防止策の策定までを行うことがあります。
しかし、監査には、単なる調査あるいは検査とは異なる独自性もあります。監査とは、法令や基準の適合性を調べ、評価したうえで監査結果と監査意見といった形で報告を行うもの。そして、不正の発見のみを目的としたものではなく、業務のプロセス、リスク・マネジメントまでを行うという特徴があるといえます。
また、監査という言葉が強く意味するのは「独立性」「外部性」でしょう。社員らが行う内部監査には監査対象との個人的関係など、なれ合い、偏りが起こりやすくなる危険性があります。そうなると監査が全く意味をなさないばかりか、むしろ有害になってしまいます。外部監査と同様、ある意味でそれ以上の留意が必要なポイントでしょう。
内部監査は、会計だけがテーマではないため、必ずしも公認会計士のような専門的な財務・会計の知識を持っている人が行うとは限りません。その会社の業務に精通している人、また法律や規則よりも、慣習、条理、常識のような「機微」に精通する人が、実効性の高い監査を行うことができます。
しかし、やはり監査は会計の知識抜きには語れないものであることも事実。監査法人での経験がある会計士は、企業にとって非常に貴重なスキルを持つ人材であることは間違いありません。監査法人で得たスキルに加え、企業内で得た業務知識が身につけば「鬼に金棒」といえます。監査法人勤務者は、ほかの人にはないスキルを持っていることを自覚しながら、研鑽を重ねていただきたいと思います。