2017年01月05日
訪日外国人旅行客の増加から、国外からのインバウンド需要に目を向ける事業者が増えています。その中で参入しやすい新事業として注目されるのが「民泊」。成長産業として、また遊休不動産の活用方法として、経営者やコンサルティングを行う会計士からも熱い視線が注がれています。
円安等の影響で訪日外国人旅行客が急増、また東京五輪の開催も控え、日本経済への好影響が期待されています。しかし同時に、リゾートホテルや温泉旅館、ビジネスホテルやカプセルホテル、ユースホステル等々、宿泊可能な施設の不足が表面化しました。
民泊には、はっきりとした定義はないものの、旅館業法等で認められる施設ではなく、個人宅やマンション等を短期に宿泊客に提供することを指します。旅館業法において「旅館業」とは、宿泊料または室料を受け、人を宿泊させる営業のこと。営業には保健所長の許可が必要です。また、民宿やカプセルホテルなど、「簡易宿所」というカテゴリもありますが、事業開始のハードルは低くはありません。民泊は旅館業法のカテゴリのどれにも属さないものといえ、法整備は整っているとはいいがたく、WEBサイト等で利用者を募り部屋を一時的に提供する形態の事業に法的な枠組みを与えることが求められています。
現在、国家戦略特別区域法に基づく特区で大阪府、また東京都大田区で民泊の基準を定めているほか、厚生労働省で、法制化のための会議を設置しています。ここでは、民泊として認められるための年間営業日数の上限、また自治体が条例で独自の規定を設ける場合の扱いなどが議論となっているようです。今後、国会へどのような法案が提出されることになるのか、注目されます。
民泊はホテル業等に比べると参入しやすいため、法整備によりコンプライアンス上のリスクが低減すれば参入が増えることが予想されます。また、企業や資産家の不動産戦略としても活用されるはずです。そこで期待されるのは、民泊の申請や運営をサポートするコンサルティング業務への需要の高まりです。
士業とのかかわりでは、許可業務であることから申請実務の代行に行政書士が実務能力をアピールしているようです。また、不動産業者やコンサルティング会社等も、民泊に関するサービスを開始する動きを見せています。会計士としては、参入者が行うほかの業務とともに民泊経営全体をモニタリングするコンサル業務、いわゆるCRE(企業不動産)戦略に関する財務的知識の提供、また資産家の遊休不動産活用と相続対策など、対応領域はかなり広くなるでしょう。会計士による新たなサービスの創出に期待したいところです。