2015年1月16日
企業には人事異動がつきもの。経営コンサルティングを行う会計士も、人事異動に関する体制構築への助言を求められることがあります。ここで知っておくべきことは、社員を定期的に部署異動させる「ジョブローテーション」です。
ジョブローテーションには、会社業務全体がどのように回っているのかということを幅広く知ることによる中長期的な人材育成、社内ネットワーク確立などの利点があります。
また、その他のメリットとして会計士が見ておきたいのは内部統制の強化です。
人材が長期間固定していると、チェック機能が弱くなることで不正の発生、隠蔽の温床となります。不正は繰り返し行われ、エスカレートしていく傾向があるため、発見が遅れることで被害が拡大しがちです。
公認会計士による企業コンサルティングでも、ジョブローテーションのルール作りに関与することがあります。制度化の際は人事異動のほかに、従業員の強制休暇も検討対象となっています。内部統制上重要な役割を担う人材を一時的に現場から外し、ほかの社員に業務を請け負わせることで不正チェックを行う手法です。
これらを制度として設定することで、実際にローテーションが行われた際のチェックの機能はもとより、ルールが設定されていることによる心理的な抑止力を働かせることもできるため、内部統制の環境が強固なものとなります。
実際に監査法人でも、会計士のジョブローテーションが行われています。
大会社の監査は原則として7年間までしか同一の監査人が行うことはできません。これはまさに、会計不正の温床を断ち、監査人の独立性を担保するために導入された制度です。
会計士のジョブローテーションは制度上強制されるものですが、その業務を通して、「人の行動を人がチェックすることの困難さ」を当事者として経験することができます。
また、後任者への引き継ぎ業務でも、監査そのものとは異なるスキルが必要であることに気づかされるでしょう。
人事制度は経営を左右する重要な要素であり、不正防止の観点だけから語れるものではありません。内部統制に関する議論には、常に企業側のコスト問題がつきまといます。
会計士によるコンサルティング業務では、監査の技術・知識を生かしながら、企業内部に深く関わり、最終的な目的である企業価値向上のための最適なソリューションを提供することが求められます。
現在法定監査業務を行っている会計士の方々も、対象となる個々の会社について、「この会社の人事コンサルティングをするとしたら、何をアドバイスすればよいか」という目で企業の実情を見る習慣をつけておくことが将来のキャリアアップにつながります。常日頃から意識していくように心がけましょう。