2015年1月19日
監査法人の重要な顧客の一つとして金融機関があります。金融機関を対象とする業務では法定監査や税務ももちろんありますが、 大手監査法人では金融機関特有の業務に合わせたアドバイザリーも提供しており、公認会計士のキャリア形成の上でも見逃せない存在となっています。
金融機関アドバイザリーで行う業務として、内部統制・内部監査体制の構築があります。
金融機関には大量の顧客情報を厳重に管理する必要が有り、またお金を常時扱いますので、不正発生の防止には細心の注意を払う業種です。
デリバティブなどを含む金融商品のリスク計測モデルを構築することも求められます。金融商品の市場リスク、信用リスク、オペレーションリスク、
流動性リスク等を検証するためには金融工学の学識も必要となります。CFAなど証券アナリスト資格者、数学など理系の学位保持者なども活躍しています。
リスク管理の際は、各種の金融規制も視野に入れなければなりません。
まず国内の金融当局による検査があります。「金融検査マニュアル」による債権の評価等は会計の専門的知識が必要であり、監査法人等が適用のためのサポート業務を行っています。
国内だけではなく、IIA国際基準やバーゼルなど国際的な金融規制もあります。
2010年には、リーマンショックなどの金融危機の再発防止を念頭に置いたバーゼルIIIの合意が成立しました。自己資本比率や流動性比率のほか、
過大なリスクを取ることを抑制する仕組みが構築され、金融機関はIFRSと同様、対応を迫られています。
国際的な活動を行う金融機関は各国の顧客、通貨、金融商品を扱っています。それだけに、会計士の業務でも英語力を求められることが多く、
またUSCPAなどの米国資格者が高く評価される傾向もあります。
金融機関のアドバイザリー業務は極めて専門性が高く、
また顧客もその道の専門家です。国内企業に向けて監査業務等を行った経験だけでは対応できない部分も多分にあります。
会計士のステップアップとしてはハードルが高いながらも、高報酬が期待できる分野です。
専門分化している業務だけに、すべての分野で強い人材が求められているわけではありません。
求人情報を検討する際は自らの強み、経歴が金融機関のアドバイザリー業務にどのように通じるのかということを意識しながらニーズを探っていくとよいでしょう。