2014年5月19日
会計基準を世界的に統一しようという動きがあります。
会計基準はその国(地域)の文化や慣習などを反映して設定されています。そのため、多かれ少なかれ国(地域)によって会計基準は異なっています。
平成12年度に適用された退職給付会計において年金数理計算の考え方が導入されるまで、日本において退職年金に関する会計基準は実質的に存在していませんでした。
有価証券の評価についても、以前は市場価額が取得価額を下回る場合に評価損を計上する低価法を採用することは認められていたものの、
上昇した場合も含めて時価で評価するという実務は行われていませんでした。
一方、欧米では年金数理計算や時価評価などの考え方を採用して財務諸表を作成していました。
現在、日本でも退職給付会計が導入され、金融商品に対して時価評価は行われていますが、
たとえばのれん(「買収された企業の時価評価総資産」と「買収価額」の差額)の処理が欧米と日本では異なっているように、
会計基準がすべての点において一致しているわけではありません。
現在、日本の多くの企業はグローバルに事業を展開しています。国内での売上高が、売上高全体の半分に満たない日本企業も珍しくなくなってきました。
そして、事業のグローバル化に応じて資金調達もグローバルに行われることが多くなっています。
一方で、資金を提供する金融機関や投資家は、企業の収益力に応じた金利で資金を提供することになりますが、国(地域)の間で会計基準が異なると、
企業間の財務諸表の比較可能性が低下することとなり、企業間比較により収益力を測ることが困難になります。
このような流れの中で、会計基準を統一しようという動きが出てきたわけです。
現在、国際的に統一的な会計基準とされているのが国際財務報告基準(IFRS)です。
しかし、IFRS自体が米国会計基準との調整などの関係で、改正が繰り返されています。
このような会計基準への対応は、企業にとっては非常に労力を要する作業です。
これは、IFRSへのコンバージェンス(会計基準の収束)のため日本の会計基準に多くの改正が行われ、この対応に多くの時間が費やされたことを考えれば容易に想像できます。
IFRSへの対応の必要性は大企業に限ったことではありません。
たとえば、大企業の子会社である中小企業では、親会社が連結財務諸表を作成する必要からIFRSを適用して会計処理をする必要性が生じます。
また、経済発展の著しい他国へ事業を展開しようという中小企業もあるでしょう。
2014年4月現在、IFRSを採用して財務諸表を作成している日本企業は多くありませんが、その数は確実に増加しています。
IFRSへの対応は、企業が成長するために必須事項になりつつあります。
公認会計士 石川理一