2016年7月25日
近年、国や自治体による公的事業の運営に民間の知見を取り入れる官民パートナーシップの導入が進んでいます。そして、監査法人系のコンサルティングファームを中心に、官民連携に関連したアドバイザリーを行う企業が増えています。コンサルティングにおける業務内容や必要な知識等を考えてみましょう。
官民連携における重要な概念にPPP、PFIがあります。PPP(Public Private Partnership)は官民連携の事業全体を指す概念で、後述のPFIのほか、指定管理者制度、市場化テスト等を指します。PFI(Private Finance Initiative)は、インフラ系の公共事業をはじめ、公的施設の管理運営を民間主導で行う手法のことを指します。
安倍政権の経済政策の骨子を示す「日本再興戦略」の中で、施策の一つとして「公共施設等のPPP/PFIの活用拡大」が取り上げられ、官民連携事業への注目度がさらに高まっています。コンサルティングファームでは、PPP/PFIを取り入れようと考える省庁や地方自治体、政府系法人にアドバイザリー業務を提供する動きが盛んになっています。
コンサルティングで行われるのは、公的プロジェクトを実施する際に、効率性や採算性の視点から戦略立案を行うこと。公的な事業の特徴として、公的資金を原資とする予算の存在があります。市場調査とともに事業内容の検討を行い、その事業が適正に運営ができるか否かを計算し、民間活用の方法等をアドバイスします。
必要となるのは、いわゆるプロジェクト・ファイナンスの手法です。企業財務(コーポレート・ファイナンス)のように、企業全体の財務状況、他事業との関係によって資金調達の在り方が決まるのではなく、そのプロジェクトのみを独立して財務分析を行い、キャシュフローを生み出すかといったモデリングを行う必要があります。
PPP等に携わる人材に求められるスキルとして、上記のプロジェクト・ファイナンスの知見のほか、官民連携に関する法律、制度の知識があります。コンサルタントとして、金融機関の出身者、行政、公的機関の経験者などが活躍しており、ファイナンスの専門家である会計士も重要な役割を果たしています。
活躍の舞台は日本だけではありません。日本の監査法人系コンサルティングファームが、新興国のビッグプロジェクトにかかわる例も増えています。国内外の国家事業にかかわることができるため、やりがいは非常に大きなものとなるでしょう。採算性や効率性、そして公益性を含めた大きな視野で事業をみることができる官民連携アドバイザリーは、会計士のキャリア形成としても、独自のものを築き上げることができる分野といえるでしょう。