2016年2月29日
M&A支援を行う会計士にとって、買収や再編により会社が求める効果を得ることができるかは最大の関心事。そのためには最適な手法を選択することが大きなポイントとなります。今回は、買収や事業の引継ぎの手法として代表的なものをいくつか挙げながら、それぞれの特徴・メリット等を考えていきたいと思います。
まず、発行される新株を引き受けたり、市場取引やTOBで既存株式を買い集めたりといった方法で対象企業の株式を取得して、対象となる企業の支配権を獲得する方法があります。また、自社の株式などと対象企業の全株式を交換し、完全子会社化する株式交換、発行済株式の全部を新たに設立する会社に取得させ、完全親子会社とする株式移転もあります。
これらのメリットは、会社資産が表象されている株式を売買することによって、機動的に対象企業の資産を包括的に所有できる点にあります。ただし、会社買収には大きな資金が必要で、様々なリスクを勘案して決定しなければ成功しません。相手企業のデューデリジェンスを、法務・税務リスクを含め総合的に行うことが求められます。
事業譲渡や会社分割など、会社全体を所有するのではなく、事業を切り離して売買する方法もあります。事業譲渡は、特定の事業を、原則として金銭で買い受ける取引。会社分割は、会社の一部をほかの会社に譲渡することで、原則として対価は株式を使うことになります。
必要な事業のみに絞ることができるというメリットがありますが、譲渡契約を慎重に行う必要があることはいうまでもありません。シナジーが発揮でき、背負うリスクを最小限にするディールが求められます。事業譲渡と会社分割の選択については、債権者の同意が得られるか、他社に移ることになる労働者との協議等、様々な条件により可否が異なります。
企業再編では、株主総会、債権者保護手続きや株式買い取り請求などの手続きが必要となることが多いため、法律的な知識も必須です。また、連結納税や株式売却益、繰越欠損の引継ぎなど課税関係も大きなポイントとなります。
デューデリジェンスやポストディールを主導できる、M&A関連のスキルの高い人材は不足しているといわれており、その候補として会計士が大きく期待されています。会計士の皆様は、現在行っている業務の知識を深めつつ、財務・法務・税務等の総合的なスキルを身につけ、自らの人材市場における価値を高めていきたいところです。