2015年4月15日
公認会計士の活躍の場として、監査業務や税務等のほか、投資関連業種に注目している方は多いでしょう。 中でも、プライベートエクイティファンド(PE)や、ベンチャーキャピタル(VC)に関する業務は代表的なものです。 これらの企業が会計士を求める理由、また転職を考える会計士に必要なことなどについて考えてみましょう。
PEは、多数の投資家からの資金調達によりファンドを組成し、主に非上場企業へ投資し、
同時に経営に携わることで企業価値を向上させ、株式を売却して利益を得て、投資家に還元する業務です。
VCは、PEの一種として位置づけられることもあり、個々の企業の投資手法により重なる部分は多くありますが、
PEが社歴のある企業の株式の取得、企業買収を行うことが多いのに対し、VCは成長性の高い創業時の企業の株式を取得すること、
企業買収を伴わないことが多いという特徴があります。
PE、VCの動きは、昨今の株高傾向により活発化しています。企業価値と市場評価に差がある企業、また将来性の高い企業など、
投資先の選定をはじめ、ファンドの組成、企業価値向上のための施策の実施等に関するスキルの高い人材を求めている状況があります。
会計士がPE、VCにかかわる場合に、期待される業務として企業価値算定、
つまりデューデリジェンスがあります。投資先の選定のために重視する基準は、投資主体となる運営会社の方針により様々。
公表する財務諸表だけではない企業の実情を分析し、正確な数値に落とし込む作業が必要です。
そして、企業価値向上のためのコンサルティングを行うことも重要業務です。経営陣の派遣により直接的に経営にかかわることもあります。
また、PE、VC業務では、最終的に利益を上げるため、IPO(株式公開)を目指す形態が多いことから、
上場要件に合わせ社内体制を整備する業務も行われます。
これらの業務は、監査法人で公認会計士が携わることが多い業務でもあります。
いわば、PE、VC業務では「入口」から「出口」まで、会計士が持つスキルが必要とされており、
求人においても、監査法人の勤務経験がある会計士は、高く評価されています。
PE、VC業務において会計士は大きな存在であることは間違いないものの、
転職市場では、金融機関の出身者、各種の事業会社、コンサルティングファーム勤務経験者、
MBAなど経営学の学位を持つ人材、法律の専門家など、様々な人材が会計士と競合する関係にあります。
監査業務を主に行ってきた会計士にとって、会計知識は優位な条件となります。
たとえば、デューデリジェンスにおいては、決算書の信頼性は成否を決する重要な要素ですので、監査の知識は有用です。
しかし、PE、VC業務を行うためには、投資効率を測るファイナンス知識、経営改善のためのマーケティング知識など、
補っておく必要があるスキルも多くあります。
転職前に特定のスキルに弱みがあるのは致し方ないところであり、それはいずれの「出自」を持つ人材であっても同様です。
現在行う会計士業務が、どのようにPE、VC業務と連関するかということを理解し、会計の専門家としての強みを活かしながら、
他の知識を補完し、企業へアピールできるよう研鑽しておくことをお勧めします。