2016年8月29日
監査業務は公認会計士の独占業務です。業務においてクライアントとなるのは、会社法上の「会計監査人設置会社」です。ここでおさらいしておきたいのが、会計監査人を設置しなくてはならない会社の種類です。設置義務がなくても会計監査人を設置する会社も併せ、会計士が活躍するのはどのような企業なのか考えてみましょう。
会計士や監査法人が、計算書類や附属明細書などの監査を行う会計監査人。会社法上、会計監査人の設置義務があるのは、大会社あるいは公開会社です。また、指名委員会等設置会社、平成26年の会社法改正により新しい企業形態として導入された監査等委員会設置会社についても、会計監査人の設置が義務となっています。
会社法では、設置義務規定がない会社についても、定款の定めによって会計監査人を設置することが可能です。2006年の新会社法の制定前は、大会社等のみが会計監査人を設置できるとされていましたが、その制限は撤廃されています。これにより、義務がない会社が会計監査人を設置する動きが広く見られるようになりました。
自主的に会計監査人を設置することのメリットとして、信頼性の向上により直接・間接金融が円滑に進むことが考えられます。また、大手企業との取引を開始する際も会計監査人設置会社であることにより信頼性が担保されます。海外との取引を行う会社も会計監査人を設置することが多いといえます。
また、証券取引所の規定では、上場の際会計監査人設置が条件となっており、こちらも事実上の義務規定となっています。そのため、将来的に上場を検討している新興企業についても、上場準備のため、また内部の財務担当者に会計監査対応実務に順応させるために早めの設置をするというケースはよくあります。
新会社法による会計監査人設置の制限撤廃、また平成26年改正の「監査等委員会設置会社における義務規定の扱い」を見ても、企業において会計監査人の活動範囲が広がっていることが分かります。会計監査、ひいては公認会計士の価値が認められている結果とみることもできるでしょう。
会計の価値に重きをおく企業が増えることは、会計士にとっては喜ばしいことです。会計監査を実施することが、事務量の増加、厳格な監査を受けることのプレッシャーに見合う企業価値向上の契機になり得るということを、業界を挙げて啓発するべきなのかもしれません。