2014年11月4日
監査法人に就職すると、監査、コンサル、税務等の職種による差はありますが、3年程度は若手のスタッフとして、その後インチャージ、マネージャーと出世していきます。
それぞれのキャリアで必要となるスキルはどのようなものなのでしょうか。
1年目は研修期間。その監査法人の監査調査書の形式、また現預金の実査等を身に付けることは、すべての業務の基本ですから、しっかりと押さえておきたいもの。
この時期は夜に補習所で勉強することになります。実際に会計士の方にお聞きすると「体力も重要だった」と口を揃えます。
大体3年目まではスタッフとして働くことになりますが、多様な業務をバランスよく経験できるか否かは、自分でコントロールできない面もあります。
モチベーションを保つためには「ルーティンをルーティンと思わない」感性が必要です。
一人で課題解決できる力量はまだないでしょうが、先輩やクライアントとのコミュニケーションを積極的に取り、
企業がどのような課題を抱えているのかということを、自分なりに好奇心を持って理解していく姿勢が大切です。
その後は監査補助者の統括、いわゆるインチャージになります。スタッフ時代と比較すると責任は相当に重くなりますが、
クライアントと直接話す機会も増え、やりがいが大きくなるはずです。
インチャージ時代は、会社の問題をいかに発見し、どう対処すれば良いのかということを、体系的に理解する時期です。
そしてこの時期は、自分の専門分野を意識して、目の前の業務を深く掘り下げる勉強を始めておきましょう。補助者の動きに目を配りつつ、一歩先を読む目が必要です。
10年目くらいからは現場に出ることは少なくなり、マネージャーとしてチームを統括する役割を担うことが多くなるでしょう。
いわば、いままで各役職で経験してきたことの集大成であり、監査における方針、価値観を大局的に、威厳を持って語れる見識を身につけたいところです。
インチャージ経験者の転職市場は盛り上がりを見せており、転職を検討する人も自然と多くなりつつあります。
この背景には、「景気が良くなり企業の規模が大きくなるにつれて、不足しがちな組織の中間層にあたる人材を積極的に採用したい」という採用側の事情と、
「自身の経験やスキルを生かしたい」という求職者側の事情が、マッチしている状況があります。
採用側である監査法人では、業界内で経験を積んだ転職希望者の数が需要に比べ少なくなっています。
当然各監査法人は、人材の流出を防ぐために、福利厚生や待遇制度などの内部体制を整えるなどの対策が行っていますが、
まだ根本的な解決に至っていないケースが多く、全体的には採用ニーズの方が多くなっています。
一般企業やコンサルティングファームにおいても、IPOや内部統制の整備や、IFRSへの対応などの必要性が、景気の回復に伴い高まっていることから、
実務全般を手掛けつつマネージメントが出来る人材へのニーズが強まっています。
また、転職を検討する側も、自身がやりたい業務や強みがある分野で更なるステップアップをしていきたいという想いから、転職に前向きな方が多くなる傾向にあるのです。
現在さまざまな業種・業界で、会計の専門家である会計士の力が求められていると言えるでしょう。
そういった可能性に挑戦するにせよ、監査法人内でパートナーとして出世していくにせよ、公認会計士は専門職業人として、
常に自らのスキルの価値を意識しキャリアの質を高めていくことが重要になります。
自分の市場価値を高めるためには、新人の時期から、現在行う目の前の業務が自らのキャリアにおいて持つ意味を考える視点が大切なのだと思います。