2016年3月29日
震災や台風、洪水などの自然災害の頻発等から、企業が災害時にいかに事業活動を復旧できるのか、災害に対応する体制が築けているのか、といったことが投資家や取引先にとって大きな関心事になっています。そこで、会計士業務としても注目されているのが、BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続マネジメント)です。
BCP(事業継続計画)は、大規模災害やテロ、パンデミック等により事業が中断された場合に、仮復旧や事業再開、完全復旧を迅速に行うための手順を文書化したものです。BCPには、計画が発動される基準や体制、具体的な手法が記載されます。
災害の種類、規模や状況により、どの経営資源の供給に危機が発生するのかは異なります。物的、人的な被害、またコンピュータのデータ、資金などボトルネックになりうる要素は多岐にわたり、それぞれの調達方法が詳細に記載される必要があります。
BCPで重要なポイントは、事業を途切れさせないために真っ先に復旧するべき中核事業は何なのかを見極め、本格復旧までに時間がかかる場合には、経営資源を調達しながらいかに中核事業を回していくのか、現実的なプランを考えることです。
BCPに起こりがちな問題としてあげられるのが、限られた社員のみが作成に関わり、社員に共有されていなかったり、環境の変化により内容が実態に即さなくなったりしてしまいがちなことです。そこで重要なのがBCM(事業継続マネジメント)の考え方。BCMは、BCPの作成プロセスを含め、災害時の組織体制全体をマネジメントする枠組みで、社員教育、演習などを含めた広い概念で、BCPはBCMの成果物と位置付けられます。
会計士との関連では、BCP、BCMはサプライチェーンマネジメント(SCM)のコンサルティングを行う場合に必須の視点となります。たとえば、在庫削減はSCMの基本ですが、災害時の供給ストップへの対応ができなければ脆弱な体制となってしまう危険もあります。
また、コンピュータ関連では、会計データをはじめとした業務システムがハードディスクの破壊や水没、クラウドネットワークのダウンなどで利用できなくなったときのリカバリのための計画も立てておくべきでしょう。
そして、会計士が最も注目すべきことはBCPやBCMが「企業価値向上」に資するということ。災害やテロへの注目度の高まりから、投資家や金融機関、取引先にBCP、BCMに関する体制について開示する動きも盛んになっています。会計専門家がその価値を啓発し、率先して体制づくりに寄与したいところです。