2014年5月22日
会計基準は不変なものではなく、環境の変化に合わせて改正され、変わっていくものです。
最近は従来にはなかった新たな会計基準も公表・適用されています。
平成23年3月期には、連結財務諸表では包括利益を表示することとなり、平成24年3月期からは「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」、
いわゆる過年度遡及会計基準が適用されています。
これらの会計基準は日本の会計慣行には馴染みのないものであったため、実務においては多少の混乱もみられました。
その他、退職給付会計や企業結合会計が改正され、随時適用されることになっています。
これらの会計基準は常識的な一般知識だけでは理解が困難な部分があり、これを適用する場面では、会計の専門知識を持つ者の価値は高まっています。
このため、公認会計士の資格を有している人、もしくは会計について公認会計士と同程度の知識を有する人を企業は求めています。
以前、取得原価主義は会計処理においては揺るがざる原則でした。
しかし、最近では、例えば金融資産については時価評価をしようという流れが大きなトレンドになっています。取得原価主義とは異なる時価主義の考え方です。
一部の貸借対照表項目に時価主義を適用する結果、「時価」が定義づけられ、また、時価主義で評価する対象項目も決められました。
これらは詳細かつ専門的であるため、その知識を有していないと会計処理をすることはできません。
この点で、会計の専門知識を持つ人と会計の専門知識を持たない人とでは、大きな差が発生しています。
また、取得原価主義についても、その定義は変わってきています。
たな卸資産の評価や固定資産の減損会計がそれです。
これらの会計基準では、取得価額のうち将来的に回収可能であると認められる金額を超えた部分については損失計上することになりますが、
通常の生活の中では資産についてこのような評価はしません。
退職給付会計や企業結合会計はさらに複雑で、会計の専門知識を持たない人がこれらの会計基準を理解することはかなり困難です。
経理の現場、特に会計監査を受ける義務のある上場会社においては、
会計処理の際に上述した会計基準を適用する必要があります。
貸借対照表や損益計算書で表示される金額は、これらの会計基準を適用した結果算出されるものです。
財務諸表上の金額を算出するための決算資料は、会計基準を実務に適用したものでなくてはなりません。
つまり、会計の専門知識を有している者のみが、適切に決算資料を取りまとめることができるのです。
決算資料の取りまとめは一つの例であり、会計の専門の知識を有効活用する場は、企業の中のそのほかの場面にも数多く存在しています。
公認会計士 石川理一