2016年12月26日
IFRSの普及が進展し、上場企業の会計基準の選択についての判断に関心が集まることが多くなりました。そんな中、東京証券取引所は2016年6月末時点の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示をもとにその内容を分析。IFRS適用業務に従事する会計士も、上場企業の動向に注目しておきたいところです。
分析対象となった企業は3507社。そのうち、IFRS適用済会社、適用決定会社、適用予定会社の合計は141社でした。前回の2016年3月末と比較して13社増加しており、2年前の2014年6月末時点の42社と比べると、99社の大幅な増加。内訳は、適用済会社が85社(前回から11社増)、適用決定会社が30社(同2社減)、適用予定会社が26社(同4社増)となっています。また、IFRS適用を検討している会社が233社と、前回から20社も増加しています。
上記適用済、適用決定、適用予定の計141社の時価総額合計は139兆円。東京証券取引所の上場会社の時価総額合計である481兆円の29%を占めており、前回から2%増。IFRSの影響力が強まっていることが時価総額でも分かります。
IFRSは、海外展開、投資の規模、また多用される会計処理の扱いなどにより、業種ごとに適用状況が異なります。東証の分析によると、適用済会社、適用決定会社、適用予定会社が存在する業種は33業種中、23業種となりました。
IFRS適用企業が多い業種としては、電気機器(21社)、医薬品(14社)、情報・通信業(13社)、卸売業(12社)、輸送用機器(12社)、サービス業(12社)等。一方、IFRS適用企業が存在しない業種は、空運業、鉱業、水産・農林業、保険業、海運業、電気・ガス業、パルプ・紙、倉庫・運輸関連、繊維製品、銀行業の10業種となりました。
輸出の多い電気機器、国際的な再編が進む医薬品など、IFRS適用の話題でおなじみの業種が並びます。今後も、あらゆる業種でIFRSへの注目が増えていくのではないでしょうか。
IFRSは、今後も様々な業種、また上場企業以外の企業からも、さらに注目されていくことが予想されます。それにより、会計士によるIFRS適用のための支援、コンサルティングの需要が伸びていくことは言うまでもありません。IFRS以外の主要な会計基準との違いにも念頭に置きつつ、適用による変化、適用のための課題など、企業の特質に合わせて研究しておきたいものです。