2016年11月21日
M&Aの増加、グローバル化による投資家の多様化により、企業価値を評価し株価の状況を分析するバリュエーションの重要性が高まっています。企業価値の評価は、多面的な視点が必須となります。数ある企業価値分析のうち基本的な考え方として、以下の3つのアプローチがあり、それぞれ基礎的な概念を知っておく必要があります。
株価の市場価格は経済状況により大きく変動し、また非上場企業など取引が頻繁には行われない株式もあります。その意味で、適正な株価に絶対的な答えはないといえるでしょう。そこでFA業務等では、大きく分けてコストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチの3つで妥当なラインを探っています。
まずコストアプローチは、その企業の財産を合わせるといくらになるか、という考え方。主に貸借対照表に記載されている純資産を簿価、あるいは時価で算定します。網羅的かつ客観的な数字が出るメリットがありますが、のれんなどの算定が難しいことや、事業の将来性などを考慮しにくい面があります。
マーケットアプローチは、市場を重視する手法です。同業種の上場企業の株式のPER、PBR、EPSなどの指標と比較したり、他のM&A案件の実際の取引の価格などを参考にしたりして、対象企業の価値のラインを見極めます。のれん等も織り込まれ、現状に即した判断が行えることがメリットですが、変動が大きく、市場が加熱している状況だと高掴みしてしまうリスクがあります。
インカムアプローチは、事業による将来の収益を現在価値をもとに評価する手法です。「DCF法」や「収益還元法」などを利用するのが一般的です。事業の将来性などを勘案した評価ができることから広く使われています。ただし、割引率や事業計画等のパラメータが変更された場合に結果が大きく異なるという特徴もあります。
M&Aの活発化から、監査法人系コンサルティングファームの募集では、バリュエーションの経験を問うものが多くなっています。バリュエーションの手法は汎用性が高く、経験とスキルがある会計士は、転職市場でもチャンスを多く得ることができるでしょう。
その際、バリュエーションの手法を詳しく知り、計算を適切に行うこともさることながら、それぞれのアプローチによる算定結果を勘案し、最終的にどのように結論を出したのか、ということを論理立てて説明できる能力を持っていることが重要といえます。会計・ファイナンスに加え、プレゼンするスキルを持つ会計士に高い評価が集まるようです。