2015年8月27日
最近、不適切な会計処理を行った大企業のニュースが、頻繁に紙面をにぎわせています。今回は、2015年4月に東京商工リサーチが公表した「不適切な会計・経理を開示した上場企業」の報告書をもとに、会計不正の傾向について見ていきましょう。
2014年度に、監査法人からの指摘などで発覚した不適切な会計・経理により、決算修正を行うなど過年度決算に影響、あるいは影響する可能性があると開示した上場企業は42社。
2013年度の38社から増加し、東京商工リサーチが同調査を開始して以来、最多の記録となりました。
不正の内容として特徴的なことは、子会社や関係会社が当事者となる不正が2年連続で増加したこと。調査報告では、「不適切会計の温床が徐々に子会社にシフトしている」との指摘がなされています。
業種別では、円安などで業績が伸びている製造業、また運輸・情報通信業が前年から大幅に増加しています。海外子会社での不適切な会計も少なくないなどグローバル化も影響しており、事例では、中国の子会社が架空取引を行い、過年度決算の訂正で債務超過に転落するといった重大なケースもありました。
当事者が親会社のケースでは、「集計ミスや資産の誤評価などによる誤った会計処理」など、単純ミスによる不適切会計が多いと指摘されます。
また、従業員が当事者となるケースでは、横領や着服のほか、業績や予算達成を目的とした不適切会計も多く見られたとしています。
予算達成が自己目的化し、上層部からのプレッシャーによって会計不正が発生するケースは、最近の有名企業のニュースでも大きく取り上げられています。常態的な不正が発生する大きな要因の一つとなっているといえるでしょう。
東京商工リサーチは、報告書のまとめとして「企業が社会の信頼を得るためにも経営トップには、コンプライアンス経営を貫くという強い決意が求められる」としています。
不適切会計の問題は、上場後の修正による債務超過への転落といった悪質性が著しいもの等、金融当局、証券取引所でも大きく問題視していることはご存じのとおりです。
ガバナンスの確立、コンプライアンス経営のために、公認会計士の役割が極めて大きいことは言うまでもありません。上場企業の監査はもちろん、内部統制のコンサル、IPO(新規公開株)支援等において、子会社等、組織の体制だけではなく、ミスを防ぐ経理体制、企業体質、風土にまで目を向けたチェックを行うことを心がけたいところです。