2015年4月9日
会計士が監査やコンサルティングなどの業務を提供する企業の業種は、非常に幅広くあります。なかでも最近は、製薬企業に関連する会計士業務の存在感が増しています。
製薬企業では、会計の専門家を企業内に持つことも多く、監査等を行っていた会計士が転職先とするケースもあるようです。
製薬企業と会計士の深い関係には、どんな背景があるのでしょうか。
製薬業界について考える際に必要となる認識は、業界全体のグローバル化と再編の動きです。新薬の特許が相次いで切れたこともあり、欧米のビッグファーマは新たな収益源を求めて世界各国で盛んにM&Aや提携を行っています。
そして、これはもちろん日本も例外ではありません。実際に昨今の製薬業界では比較的M&Aが多くなっており、会計士にはM&A等に付随する会計業務が求められる傾向にあります。
国内外を問わない再編が活発化していることで、会計基準の統一を図るためにIFRSの需要が高くなっており、専門知識を持った会計士が求められる傾向にあります。
この他にも、製薬企業の特質として、長期間にわたり研究開発費が投入される収益構造があります。製薬企業は、新薬を開発し特許を取得した後で、知的財産の権利による収入で研究費を回収し、収益を生み出しています。
この業態では、研究開発費の費用・資産計上の仕方など、会計処理の仕方が財務に大きく影響するため、会計士が会計基準の適用に関し、詳細なシミュレーションを行う必要があり、会計士の必要性が高くなるといえます。
また、業務システムの構築でも監査法人等によるコンサルティングが行われています。
業界再編にともない、買収先企業とのシステム統一、グループ企業の各種業務のシェアードサービスなどの需要も高まっています。
サプライチェーンマネジメント(SCM)や、製造販売後安全管理業務など、IT化により大きな成果を挙げることができる業務もあります。システム構築に関するコンサルティングや、SCM体制の構築により実現する管理会計、安全性や法令の順守に関する内部監査・統制に関する業務も発生しています。
IFRS、M&A、システム構築、内部統制等々、会計士が求められる状況は非常に複合的です。製薬系企業へ向けたサービスを展開している監査法人、コンサルティングファーム、また製薬企業の企業内会計士の募集でも、どのようなスキルが求められるかは様々です。
会計士として、業界の再編の状況にアンテナを張りながら、製薬企業で求められるスキルについて知り、自身のステップアップの対象として考えてみてはいかがでしょうか。