2015年12月08日
公認会計士はコンサルタントや企業内会計士として、業務システムについて提案を行うことがあります。関連するシステムは会計ソフトをはじめ、在庫や給与、固定資産管理等多種多様。そのなかで今回取り上げるのは支社や営業所など、グループ企業との企業間取引を一元管理するCMS(キャッシュマネジメントシステム)です。
CMSは、資金を管理するシステムのこと。子会社・関連会社等、グループ企業の資金を効率よく管理することによって、様々なメリットを享受することができます。CMSの代表的な手法に「プーリング」と「ネッティング」があります。
プーリングとはグループ企業の余裕資金をより有利に運用・調達すること。グループ企業間で分散している資金を1つの口座にまとめることで、資金調達や運用に一体的な戦略で臨めるようになります。連結ベースの財務状況が全体的に「見える化」されるため、リスク管理、財務改善のための戦略を練ることが容易になります。
ネッティングは、グループ企業間の取引において、発生する債権と債務を自動的に相殺し決済するシステムのこと。実際に動くお金は相殺後のものとなるので、決済の数が減り取引される額も少なくなることから、銀行等への手数料削減、事務作業の削減などが期待できます。
CMSには、社内システムの大幅な改編が必要となります。関連会社とメインバンクなどの金融機関が同じであれば、銀行が提供するCMSサービスを利用して管理する方法もありますが、ERPソフトの導入、自社開発システムの導入によって、社内システムを構築する場合もあります。
CMSは、社内の各部署と緊密なコミュニケーションを行うことで、初めて実効性の高いシステムができ上がります。会計士としては、業務改善や課題解決のソリューションとして社内で有効なものとするために、実際のシステム構築を行う技術者との意思疎通を図りながら、知識を提供していくことが必要となります。
また、CMSのメリットは、財務情報が一元化されることにより、資本政策の策定や経営戦略につなげることができることです。その際に、情報を読む会計専門家の役割が必要であることは言うまでもありません。CMSの構築は、財務知識と会社業務の双方についてよく理解する会計専門家の知見が不可欠であることから、企業内会計士が主導するのが最適な業務として注目しておく必要があるでしょう。