2016年11月14日
公認会計士の働き方のうち、大きな選択肢として、税理士登録を行ったうえでの税務があります。会計士は、制度上税理士登録の資格が自動付与されますが、その際に注目しておきたいのが、税理士法改正により新しく創設された研修制度です。税務に関する研修の充実が図られるようです。
公認会計士の税理士資格付与については、日税連と公認会計士協会の間で、資格自動付与の廃止、会計士資格による税務の解禁等、様々な意見が出て、対立的な議論が行われることも多くありました。そしてこのほど、その問題に税理士法改正という形でひとつの結論が出されました。
改正税理士法では、平成 29 年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について、公認会計士法に定める実務補習団体等が実施する研修のうち、「税理士試験合格者と同程度の学識を習得することができる研修で国税審議会が指定する研修」を修了するとの規定が設けられています。また考査、修了考査の試験について、研修の運営について国税審議会に報告されることも示されています。国税審議会は国税庁の諮問機関であり、日税連からも委員が選ばれています。税法関係科目の合格基準がより厳格になり、資格の自動付与の要件に税理士の立場からのチェックが入ることになるといえるでしょう。
新制度の創設を受け、実務補習団体等である日本公認会計士協会および一般財団法人会計教育研修機構は、補習規程等を改正しました。そして、その内容がこのほど国税審議会において「税法に関する研修」として指定されています。
実務補習の充実策として、考査の合格基準について変化がありました。監査科目だけではなく、税法科目も重要な科目と位置付け、従来は、税法科目の考査2回で各回4割以上の取得が要件とされていましたが、それに加える要件として、税法科目全体で6割以上の取得を設けることとされました。また、税法科目の考査2回について、全国統一問題で同一日時に実施することや、実務補習の考査および修了考査の問題を公表するなどの改正もなされています。
公認会計士として、キャリア形成を行う過程で、税務を中心的に行うケースは多くあります。また、経営コンサルやM&A、IPO等の業務でも税額計算は必須となります。しかし、公認会計士試験合格者の中には、税法の知識にあまり自信がないという方もいらっしゃるようです。今回、税法研修について厳格化される形で制度化されたことを、税務に関する多くの知見を得られると、前向きにとらえるべきなのかもしれません。