2015年1月26日
公認会計士の監査で行う重要な業務の一つに、実地棚卸の立会いがあります。 棚卸資産が適正に計上されているか否かについて、在庫担当者と詳細に対話を行いながら効果的・効率的に監査することは、決算書類の正確性を担保するための重要なポイントとなります。
監査の観点からは、棚卸は資産の過少計上による粉飾決算の防止や、適正な在庫状況を把握する体制を構築しているかといった、内部統制にも関連しますが、在庫の量を正確に把握することは、コストダウン、バリューチェーンの構築にも大きく影響し、経営改善のために不可欠であることを忘れてはなりません。
実地棚卸の業務では、会計士は様々な業種の企業で、外部の人が決して見ることがない場所に入り、会社経営をロジスティックスの面からつぶさに見ることになります。
在庫や仕掛品が、血液の循環のように回る様は、企業の健康状態をありありと示します。
監査の過程で、タグやリスト等在庫管理の手法、在庫削減、非常時の供給体制の確保など、経営改善に資するアイデアが浮かんだことがある会計士の方は多いでしょう。
監査は独立性を保たなければならないのはいうまでもありませんが、実地棚卸立会の経験・スキルを応用することで、将来的にコンサルティング部門で業務を行うこととなった場合、あるいはコンサルの業種に転職する際、大きく役立ちます。
また、監査法人や会計事務所だけではなく、企業内会計士としても、会計の知識を活かして、ERPシステムの導入を含め、業種に適合した在庫管理の方法を現場担当者と協力しながら構築することで、経営体質を強化することができるでしょう。
監査の仕事を行う会計士の多くが、業務の制約と自らのスキルアップについての焦りを持っていると言われます。
しかし監査業務の中には、他業種の人では得難い汎用性の高いスキルが隠れています。
その中で、実地棚卸の立会いの経験は、ほとんどの業種で高い評価を受けることが期待されるスキルです。
転職の際、しばしば自らの「スキル・キャリアの棚卸」が必要であるという言い方がなされますが、棚卸業務の価値も確実に「棚卸」しておきたいもの。
実地棚卸業務が、転職を検討する事務所、企業にどのようなメリットをもたらすのかを見つめ直し、提示できるようにしておくことが重要なのだと思います。