2015年3月30日
平成26年6月20日成立、平成27年5月施行予定の改正会社法により、大会社の社外取締役の設置について大きな変更がありました。
設置義務化は見送られたものの、社外取締役の要件が厳格化されるなどの改正が行われています。
公認会計士の業務に、この改正はどのような影響を及ぼすのでしょうか。
改正会社法では、公開会社かつ大会社である会社は、社外取締役を置かない場合には、
「社外取締役の設置が相当でない理由」を株主総会で説明する義務が課されることとなりました。
また、社外取締役を設置する場合であっても、社外取締役の独立性を強化するために、就任の要件として、
[1]当該会社の役員、従業員等、子会社の役員等ではないこと[2]経営者の親族や、親会社の役員・支配人・使用人、同じ親会社を持つ「兄弟会社」の役員等ではない、
といった項目を追加し厳格化が行われています。
社外取締役については、会社法のほか、証券取引所の上場基準における規定にも注意する必要があります。
東証では、上場会社に対して、「一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役」と定義される「独立役員」を置くことを
遵守すべき事項として規定しており、上場企業の独立役員設置状況を公表しています。
こういった状況に加えて、金融庁と東京証券取引所は2015年2月から、上場企業に対し2名以上の独立社外取締役の選任を求める
「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」を策定し、2015年6月からの適用を目指しています。
この動きを受けて、上場企業が社外取締役の選定に本腰を入れている、との報道も見られるようになっています。
改正会社法の報告義務に関する法制をみると、いわば社外取締役の設置を基本としながら、例外として不設置を認めたとも取れる内容になっています。
社外取締役の設置が今後も強く求められる方向に進むことは間違いなく、今回見送られた設置義務化についての議論にも気を配っておく必要があります。
会計士業務への影響を考えると、新会社法の適用対象となる企業(上場企業やIPOを検討する企業)に対して、
社外取締役に関する新しい制度に対応するための最適なアドバイスを行うことが求められています。
企業の監査役として公認会計士が就任されるケースが今までよりも増えてくることが予想されます。
複数企業の社外取締役として活躍する会計士の活躍が期待されているといえるでしょう。
社外取締役の推進は、市場から、企業が公表する会計をはじめとする情報の信頼性担保を求められていることを示すものです。
制度の趣旨を考えるうえで、会計士に期待されることが大きいということを今まで以上に意識する必要がありそうです。